昨年度までの検討により,果実中のフェノール化合物やテルペン類などの二次代謝産物の光環境による変動と呼応した遺伝子発現を示すbZIP型の転写制御因子を見出し,ブドウ果実中における発現の変動などについて明らかとした。本年度はその機能について更に解析するため,ブドウ培養細胞を用い,一過的にこのbZIP因子を強制発現させた系を用いて,マイクロアレイ解析により遺伝子発現の変動を網羅的に解析した。その結果,特に,フェノール化合物代謝に関連する遺伝子群の変動がみられることがわかった。次に,ブドウ培養細胞による一過性の遺伝子発現系を用いて,レポーターアッセイを行った。bZIP因子は各フラボノイド(アントシアニン,プロアントシアニジン(縮合型タンニン))特異的経路の遺伝子のプロモータを活性化しなかった。更に,各経路を特異的に制御するMYB型転写因子と共発現させることによってプロモーター活性はMYB因子単独の場合と比べて,逆に減少することがわかった。このbZIP型転写因子が活性化しその機能を発揮するためには,相互作用する別の因子を必要としていることが考えられたため,リンゴのcDNAライブラリーを用いて,酵母ツーハイブリッド法をによる相互作用する因子のスクリーニングを行った結果,bZIP転写因子とユビキチンリガーゼ等との相互作用について明らかとなった。
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