研究課題/領域番号 |
15K07309
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
宇佐見 俊行 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (50334173)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 植物病害 / 植物病原性菌類 / 病原性 |
研究実績の概要 |
擬有性生殖による遺伝的組換えを利用した前年までの研究で、DNAマーカーT12が座乗する染色体が半身萎凋病菌(Verticillium dahliae)のトマトに対する病原性に関与することが示唆された。また、菌株TV103およびVdp4においてT12が座乗する染色体をマッピングしたところ、全ゲノムが公開されている菌株JR2の第3染色体に相当することが明らかとなった。そこで、本染色体上に座乗するDNAマーカーをより多く使用して、擬有性生殖による組換え株の分析を行った。組換え株の中には、本染色体の中で転座や欠失などの染色体突然変異を起こしたと思われるものが複数存在し、そのような菌株は、本染色体の一部の配列のみを保有していた。このような菌株を利用し、いずれの領域を保有した場合にトマトに対して病原性を示すかを調査することで、病原性を決定するゲノム領域の推定を行った。その結果、この染色体の短腕側の領域を保有する組換え株はトマトに対して病原性を示さなかったことから、短腕側は病原性に関与しないと考えられた。一方で、病原性を示す組換え株は長腕側の中央部の領域を共通して保有しており、この周辺の領域が病原性に関与することが示唆された。また、全ての組換え株はナスに対して強い病原性を示したことから、このゲノム領域はトマトに対する特異的な病原性に関与すると考えられた。さらに、トマト半身萎凋病菌のレース1~3の圃場分離株について遺伝的調査を行い、擬有性生殖により非病原力因子の座乗位置を推定するために供試する菌株を選定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度までに、「1.T12染色体のフィジカルマッピング」と「2.トマトに病原性を示す複数の菌株における病原性染色体の特定」はほぼ完了しており、28年度は予定通りに「3.病原性を決定するゲノム領域の特定」を進めた。そして、多数のゲノムDNAマーカーを用いた解析を行うことにより、組換え株の病原性の有無に例外なく一致するマーカーを見出し、病原性の決定に関与すると推定されるゲノム領域を特定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在はさらに多くの組換え株を作出して解析を行っており、これにより病原性の決定に関与するゲノム領域をさらに絞り込む。そして、当該領域を含むBACクローンの塩基配列を決定して、そこに存在する遺伝子を明らかにするとともに、このクローン(あるいはそれをサブクローニングした断片)をトマトに病原性を持たない菌株に導入することで、病原性への関与を調査する。また、29年度が研究計画の最終年度であるので、得られた成果を国際的学術誌に投稿するなど、成果の発表も行う。
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