研究課題
今年度は、2つの研究課題で設定した、初期の研究計画を全て遂行することができ、成果を得ることができた。具体的には以下の通りである。(1)新規JAシグナル制御因子JMTF1の植物病理学的役割JMTF1過剰発現体を用いてイネ白葉枯病検定を行ったところ、抵抗性が強化されていたことから、JMTF1がイネ病害抵抗性において重要な正の制御因子であることが明らかとなった。また、ジャスモン酸(JA)応答性の防御関連遺伝子の一つである、peroxidase(Prx)がJMTF1過剰発現体で常時高発現していることが明らかとなった。このPrx過剰発現体はイネ白葉枯病に対する抵抗性が強化されていた。さらに、JMTF1過剰発現体で常時高発現している、オーキシンの負の制御因子であるOsIAA13の、機能獲得型変異体を用いたイネ白葉枯病検定を行ったところ、野生型より抵抗性が強化されていたことから、JMTF1がJAシグナルを正に制御すると同時に、オーキシンシグナルを負に制御することで、イネ白葉枯病抵抗性を正に制御していることが明らかとなった。(2)新規OsNINJA1結合タンパク質の同定昨年度に絞り込んだ26種類のOsNINJA1相互作用タンパク質について、極端に小さい2種類を除いた24種類のタンパク質の細胞内局在解析を行ったところ、14種類のタンパク質において、OsNINJA1と同じ核の局在が認められた。その中から、新規性の高いOsSRO1aを選抜し、集中して解析した。その結果、OsNINJA1とOsSRO1aは植物細胞内でも結合することがBiFc実験によって証明された。また、既に当研究室で明らかとなっているJAの正の制御因子であるOsMYC2とも相互作用することが明らかとなった。さらにOsSRO1a過剰発現体の種子も確保した。OsNINJA1自体の性状解析も終了した。
2: おおむね順調に進展している
小課題(1)では、予定した実験を全て遂行でき、JMTF1がイネ病害抵抗性機構に重要な転写因子であることが証明できた。小課題(2)では、OsNINJA1相互作用タンパク質として、シロイヌナズナにおいても報告例がないOsSRO1aを見出すことに成功した。また、予備として設定していたOsNINJA1自体の解析も順調に進み、論文に投稿できるレベルまでにまとめることができた。このように、初期に計画した2つの研究小課題に対する実験計画はすべて遂行でき、そのすべての実験において成果を得ることができた。以上の理由から、おおむね順調に進展していると判断した。
今年度は初期の計画通りに研究が進み、成果も得ることができたため、今後も、初期の研究計画で計画した実験を予定通り全て実施する。小課題(1)については、最終目標である、JMTF1が直接制御している遺伝子の同定を試みる。小課題(2)については、OsSRO1aのJAシグナル伝達機構に対する役割を明確にし、これまでに報告例のない、新規の知見を提供できるようにする。これらの実験を確実に行い、申請時に設定した目標は確実に達成できるようにする。
予備の研究課題として設定していたOsNINJA1に関する研究が予想以上に進み、論文を投稿する運びとなり、その際に必要な掲載料等に充てるため。
論文掲載時に必要な掲載料等に使用する予定である。掲載料が無料の雑誌に発表する際には、物品費等に充てる予定である。
すべて 2017 2016
すべて 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)