研究課題
今年度は、2つの研究課題で設定した、初期の研究計画をほとんど遂行することができ、成果を得ることができた。具体的には以下のとおりである。(1)新規JAシグナル制御因子JMTF1の植物病理学的役割JMTF1過剰発現体の解析から、peroxidaseをコードするJA応答性OsPrx26遺伝子の発現が有意に誘導されていることが明らかとなった。そこで、OsPrx26の病理学的役割を解明するため、OsPrx26過剰発現体を作出し、その諸性質を解析した。その結果、OsPrx26過剰発現体では、葉のリグニン含量が有意に増加しており、OsPrx26が物理的防御に必須なリグニン合成にかかわる遺伝子であることが明らかとなった。実際にこの過剰発現体はイネ白葉枯病抵抗性が強化されていた。また、JMTF1過剰発現体では、オーキシンシグナルの負の制御因子であるOsIAA13遺伝子の有意な発現誘導も確認された。そこで、JMTF1-GFP過剰発現体を作出し、GFP抗体を用いたクロマチン免疫沈降法(ChIP)による、OsPrx26とOsIAA13遺伝子のJMTF1の直接制御の有無を検証した。その結果、JMTF1はOsPrx26を直接制御していることが明らかとなり、JMTF1によって直接制御を受ける防御関連遺伝子を特定することができた。(2)新規OsNINJA1タンパク質の同定昨年度作出したOsSRO1a過剰発現体を用いて、JA生理作用である、根の伸長阻害、クロロフィル分解作用、及び、暗条件での葉の老化作用を検証したところ、すべての実験において、JA低感受性を示す結果が得られた。このことから、OsSRO1aはJAシグナルにおける負の制御因子であることが明らかとなり、イネJAシグナル伝達機構に重要な新規制御因子を見出すことに成功した。
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