研究課題/領域番号 |
15K07314
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
木場 章範 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (50343314)
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研究分担者 |
大西 浩平 高知大学, その他の研究科, 教授 (50211800)
曵地 康史 高知大学, その他の研究科, 教授 (70291507)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ジアシルグリセロールキナーゼ / 病害抵抗性 / リン脂質代謝 / フォスファチジン酸 / フォスファチジン酸フォスファターゼ / タンパク質リン酸化酵素 |
研究実績の概要 |
青枯病はRalstonia solanacearumによって引き起こされる土壌伝染性の難防除・細菌性病害である。申請者はNicotiana植物をモデルに青枯病発病の成否に関わる植物の分子応答機構について解析を進めている。病原性・非病原性青枯病菌を接種したNicotiana植物より青枯病菌感染応答性遺伝子の遺伝子発現プロファイルと機能解析を進める過程で、リン脂質代謝に関わると推定される酵母のフォスファチジルイノシトール輸送タンパクであるSec14Pタンパク質のホモログとフォスファチジン酸フォスファターゼ(PAP)を見出した。SEC14Pはリン脂質の輸送を介してPLC、PLD等のリン脂質代謝酵素活性を活性化することによって、シグナルリン脂質であるフォスファチジン酸(PA)を生産した結果、植物免疫の活性化を導く。一方、PAPを抑制した植物ではPAの蓄積を介して青枯病、野火病等の広範囲の植物病原細菌に対して強い抵抗性を示す。これらの結果から、PAの生産が植物免疫のON・OFFに重要であることを示してきた。本研究ではSec14P、PAPに加えリン脂質代謝に関連するフォスフォリパーゼC、およびD(PLC、PLD)、ジアシルグリセロールキナーゼ(DAGK)、PAの下流で抵抗性誘導に重要なシグナル伝達因子の解明に着目し、解析を進めた。まず、PA合成に直接かかわる酵素として新奇のDAGKを2種単離した。これらDAGKを抑制した植物ではPA合成量の低下に伴い、病害抵抗性が低下した。さらに、PAを介した抵抗性機構の解明のため、PAP抑制植物を用いたトランスクリプトーム解析から、PAP抑制植物において特異的に発現が上昇する遺伝子を多数見出した。それに加えて、PAの直接のターゲット分子の解明のため、PAに結合能を有するタンパク質に着目した結果、2種のタンパク質リン酸化酵素の関与の可能性を見出した。さらに、ゲノム編集によるPAPノックアウト植物の作出も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
PA合成に直接かかわる酵素として新奇のDAGKを2種単離し、病害抵抗性への関与を明らかにした。さらに、PAを介した抵抗性機構に関わる伝子群を単離するとともに、PAの直接のターゲット分子として、2種のタンパク質リン酸化酵素の関与の可能性を見出した。これらの成果はPAを介した病害抵抗性の解明に大きな意義がある。さらに、PAPノックアウト作物の作出は、PAを介した病害抵抗性の解明のみならず、PAPをターゲットとした病害抵抗性育種の可能性を検討する格好の材料となる。そのような理由から、当初の予定より進捗状況は良好と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
PA合成に直接かかわる酵素として新奇のDAGKについては酵素学的性質の解明、さらには病害抵抗性への関与に関する分子機構を詳細に解析し、早急に国際的なジャーナルへの投稿を目指す。PAを介した抵抗性機構に関わる伝子群についてはハイスループットな遺伝子サイレンシング法により、病害抵抗性に関わっている遺伝子のスクリーニングを行うとともに、詳細な機能解析にを進める。PAの直接のターゲット分子として、2種のタンパク質リン酸化酵素については酵素学的性質の解明、さらには病害抵抗性への関与に関する分子機構を詳細に解析し、早急に国際的なジャーナルへの投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はPA合成に直接かかわる酵素として新奇のDAGK、PAを介した抵抗性機構に関わる伝子群、PAの直接のターゲット分子(タンパク質リン酸化酵素)の単離と解析を中心に行う予定であった。しかし、PAPノックアウトと作物の作出の進捗状況が良好であったため、植物資料作成に関わる研究にも力を入れた。そのため、分子生物学・生化学的解析のために予定していた予算が若干の繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は新奇のDAGK、PAを介した抵抗性機構に関わる伝子群、PAの直接のターゲット分子、さらにはPAPノックアウト植物の分子生物学・生化学的解析を行う予定である。そのために、繰越予算を用いる。これらを同時並行で行うことにより、共通試薬の効率的な使用が可能となり、繰り越した予算を有意義に使用できると考えている。
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