環境中に広く生息するPseudomonas属細菌は、二次代謝産物のバリエーションに富むものが多く、それらが本属細菌の各種の表現型に結びついている。すなわち植物病原毒素は植物病原細菌特有の二次代謝産物であり、植物保護細菌特有のものは病原微生物の増殖を抑える抗菌性物質として作用する。しかし微生物ゲノム情報が飛躍的に蓄積しつつある昨今においてなお、そうした二次代謝産物とその合成酵素遺伝子の特徴づけがなされている細菌はごく一部のモデル系統に限られている。本研究では、様々な植物の根圏から単離された植物保護細菌を対象とし、それらのゲノムデータをもとに新たなバイオコントロール因子とその合成酵素遺伝子群を明らかにすることを目的とする。 平成29年度は、植物保護細菌Pseudomonas protegensの近縁系統であるPseudomonas sp. Os17株における新規バイオコントロール因子の候補遺伝子群(前年度までに同定済み)がコードするタンパク質の特異的抗体を得て、ウエスタンブロット解析により各遺伝子の欠損変異株における発現パターンを明らかにした。また、P. protegensでは、抗菌性に関与する因子の発現は二成分制御系GacS/GacAにより制御されており、Os17株にも同様の機能が保存されていることから、当該遺伝子の発現制御機構について調べたところ、プロモーター活性とタンパク質発現レベルのいずれもがgacA欠損変異株で顕著に低下することが明らかとなり、他のバイオコントロールと同様の制御下にあることが明らかとなった。以上のことから、ゲノムデータに基づくバイオコントロール因子の探索方法が有効であることが示された。
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