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2015 年度 実施状況報告書

複数の病原体ゲノムと相互作用するデュアル抵抗性蛋白質システムの分子基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K07321
研究機関岡山県農林水産総合センター生物科学研究所

研究代表者

鳴坂 義弘  岡山県農林水産総合センター生物科学研究所, その他部局等, その他 (20335459)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード植物免疫 / 抵抗性遺伝子 / 抵抗性蛋白質 / 分泌蛋白質 / 炭疽病菌 / シロイヌナズナ / アブラナ科 / エフェクター
研究実績の概要

私たちは、モデル植物シロイヌナズナのゲノム上で隣接する異なる2つの抵抗性(R)遺伝子が、異なる4種の病原体の攻撃を認識して抵抗反応を起動するデュアル抵抗性(R)蛋白質システムを世界に先駆けて発見した。本課題では、異なる4種の病原体の非病原力遺伝子(Avrエフェクター)を用いて、「植物の病原体認識システム」と、「異なる4種の病原体の感染戦略」との複雑かつ多様な相互作用システムの分子基盤を明らかにすることを目的として研究を行った。
(1) デュアルR蛋白質システムが認識するアブラナ科野菜類炭疽病菌Avrエフェクターの探索と同定
共同研究により、複数の炭疽病菌(ウリ類炭疽病菌、アブラナ科炭疽病菌等)のゲノムを解読して、細胞膜を透過するためのシグナルペプチドをN末端に有する分泌蛋白質をコードする遺伝子(エフェクター)を推定し、アブラナ科炭疽病菌の約500種のエフェクター候補遺伝子のクローニングに成功した。これらを順次、デュアルR遺伝子を導入したベンサミアーナタバコに爪楊枝接種し、過敏感細胞死の誘導の検定により、Avrエフェクターの探索を試みた。本年度は、400種の遺伝子について爪楊枝接種が完了し、さらに数十種の遺伝子については、35Sプロモーターによる高発現バイナリーベクターに載せ替えて、ベンサミアーナタバコへの注入接種が終了した。その結果、過敏感細胞死を誘導する数個の遺伝子が発見できた。その中で、デュアルR蛋白質との相互作用により過敏感細胞死を誘導したと考えられる2遺伝子を得た。
(2) デュアルR蛋白質による異なる4種の病原体認識機構の解明
AvrRps4およびPopP2と、デュアルR蛋白質およびそのドメインをベンサミアーナタバコの葉で一過的に発現することで、過敏感細胞死等を指標にして各AvrエフェクターとデュアルR蛋白質の相互作用を解析した。その結果、AvrRps4存在下ではRPS4およびRRS1がミクロソーム画分から減ずることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

シロイヌナズナ由来のデュアルR遺伝子RPS4とRRS1を形質転換したコマツナおよびキュウリはそれぞれColletotrichum higginsianumまたはColletotrichum orbiculareに抵抗性を示した。このことから、両炭疽病菌に共通に存在するエフェクターのいずれかがAvrエフェクターである可能性が高い。そこで、ゲノム解析および両炭疽病菌のマイクロアレイ解析から分泌蛋白質遺伝子を予測し、既に約500種の分泌蛋白質遺伝子をクローニングした。これらについてベンサミアーナタバコを用いた爪楊枝接種法により、Avrエフェクターの探索を進めているが、これらの中に候補が含まれていない可能性も考えられる。糸状菌の分泌蛋白質は1000種以上存在することから、このままクローニングする遺伝子を増やしていくか、別の方法論をとるかの選択を迫られている。

今後の研究の推進方策

現在までに取得できたデュアルR蛋白質との相互作用により過敏感細胞死を誘導したと考えられる2遺伝子について解析を進めていくとともに、別のアプローチからAvrエフェクターの探索を進める必要があると考えている。例えば、炭疽病菌にランダムに変異を導入して変異株ライブラリーを作製し、これをシロイヌナズナ抵抗性生態型に接種することで、感染能を有する変異炭疽病菌を取得して原因遺伝子を同定することによりAvrエフェクターを得るというものである。しかし、本法では膨大な量の変異体(数万個体)をスクリーニングする必要があり、効率的かつ画期的な方法論の構築が必要と考えている。

次年度使用額が生じた理由

共同研究機関によるアブラナ科炭疽病菌のゲノム解析のアッセンブリの結果により、エフェクターをクローニングする予定を立てており、その進捗に併せて資金が来年度に繰り越された。

次年度使用額の使用計画

28年度には共同研究機関によるアブラナ科炭疽病菌のゲノム解析のアッセンブリが完了するため、エフェクターのクローニングに資金を使用する。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (16件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Leucine zipper motif in RRS1 is crucial for the regulation of Arabidopsis dual resistance protein complex RPS4/RRS12016

    • 著者名/発表者名
      Narusaka M, Toyoda K, Shiraishi T, Iuchi S, Takano Y, Shirasu K, Narusaka Y.
    • 雑誌名

      Scientifc Reports

      巻: 6 ページ: 18702

    • DOI

      10.1038/srep18702

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] デュアル抵抗性蛋白質システムを構成する抵抗性蛋白質RRS1のロイシンジッパーモチーフの機能解析2016

    • 著者名/発表者名
      鳴坂真理、白須賢、豊田和弘、高野義孝、白石友紀、鳴坂義弘
    • 学会等名
      平成28年度 日本植物病理学会大会
    • 発表場所
      岡山市
    • 年月日
      2016-03-21 – 2016-03-23
  • [学会発表] コアエフェクター候補遺伝子CCE1はColletotrichum属菌に保存され、細胞死を誘導する2016

    • 著者名/発表者名
      津島綾子、鳴坂真理、Pamela Gan、熊倉直祐、浅井秀太、門田康弘、高野義孝、鳴坂義弘、白須賢
    • 学会等名
      平成28年度 日本植物病理学会大会
    • 発表場所
      岡山市
    • 年月日
      2016-03-21 – 2016-03-23
  • [学会発表] 比較ゲノム解析を用いたColletotrichum属菌における病原性エフェクターの探索2016

    • 著者名/発表者名
      熊倉直祐、パメラ・ガン、津島綾子、浅井秀太、門田康弘、鳴坂真理、鳴坂義弘、高野義孝、白須賢
    • 学会等名
      平成28年度 日本植物病理学会大会
    • 発表場所
      岡山市
    • 年月日
      2016-03-21 – 2016-03-23
  • [学会発表] シロイヌナズナのユビキチンリガーゼPUB4はCERK1との相互作用を介して免疫応答を制御する2016

    • 著者名/発表者名
      出崎能丈、高橋昌平、小泉春樹、三浦駿希、八嶋航平、石橋裕子、紀藤圭治、鳴坂真理、鳴坂義弘、賀来華江、渋谷直人
    • 学会等名
      平成28年度 日本植物病理学会大会
    • 発表場所
      岡山市
    • 年月日
      2016-03-21 – 2016-03-23
  • [学会発表] ウリ類炭疽病菌の付着器において発現するエフェクター候補群ECAPの機能解析2016

    • 著者名/発表者名
      奥田竜太、石塚隼也、Suthitar Singkaravanit-Ogawa、Pamela Gan、山田晃嗣、鳴坂義弘、白須 賢、高野義孝
    • 学会等名
      平成28年度 日本植物病理学会大会
    • 発表場所
      岡山市
    • 年月日
      2016-03-21 – 2016-03-23
  • [学会発表] ウリ類炭疽病菌の強病原性株RSCO-09-1-2に関する研究2016

    • 著者名/発表者名
      井上喜博、Pamela Gan、鳴坂義弘、白須 賢、高野義孝
    • 学会等名
      平成28年度 日本植物病理学会大会
    • 発表場所
      岡山市
    • 年月日
      2016-03-21 – 2016-03-23
  • [学会発表] ウリ類炭疽病菌のメタロプロテアーゼ遺伝子CoMEP1,CoMEP5は付着器分化時に発現し,侵入時における植物の防御応答に関与する2016

    • 著者名/発表者名
      中前彩加、原田 賢、鳴坂真理、鳴坂義弘、高野義孝、Pamela Gan、白須 賢、久保康之
    • 学会等名
      平成28年度 日本植物病理学会大会
    • 発表場所
      岡山市
    • 年月日
      2016-03-21 – 2016-03-23
  • [学会発表] The functional analysis of RRS1 on the immune response of Arabidopsis dual resistance proteins RPS4/RRS12016

    • 著者名/発表者名
      Mari Narusaka, Yoshihiro Narusaka
    • 学会等名
      第57回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      盛岡市
    • 年月日
      2016-03-18 – 2016-03-20
  • [学会発表] An E3 ubiquitin ligase, PUB4, regulates immune signaling through the interaction with Arabidopsis CERK12016

    • 著者名/発表者名
      Shohei Takahashi, Haruki Koizumi, Takaki Miura, Kohei Yashima, Yuko Ishibashi, Keiji Kito, Mari Narusaka, Yoshihiro Narusaka, Yoshitake Desaki, Hanae Kaku and Naoto Shibuya
    • 学会等名
      第57回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      盛岡市
    • 年月日
      2016-03-18 – 2016-03-20
  • [学会発表] The core effector candidate gene, CCE1 is conserved in plant pathogenic Colletotrichum fungi and induces cell death2016

    • 著者名/発表者名
      Ayako Tsushima, Mari Narusaka, Pamela Gan, Naoyoshi Kumakura, Shuta Asai, Yasuhiro Kadota, Yoshitaka Takano, Yoshihiro Narusaka, Ken Shirasu
    • 学会等名
      第57回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      盛岡市
    • 年月日
      2016-03-18 – 2016-03-20
  • [学会発表] Hunting virulent effectors in plant pathogenic fungi Colletotrichum species using comparative genomics2016

    • 著者名/発表者名
      Kumakura, N., Gan, P., Tsushima, A., Asai, S., Kadota, Y., Narusaka, M., Narusaka, Y., Takano, Y., Shirasu, K.
    • 学会等名
      第57回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      盛岡市
    • 年月日
      2016-03-18 – 2016-03-20
  • [学会発表] デュアル抵抗性蛋白質を構成するRPS4およびRRS1の機能解析2015

    • 著者名/発表者名
      鳴坂真理、白須賢、豊田和弘、高野義孝、白石友紀、鳴坂義弘
    • 学会等名
      平成27年度日本植物病理学会関西部会
    • 発表場所
      徳島市
    • 年月日
      2015-09-29 – 2015-09-30
  • [学会発表] 比較ゲノム解析による炭疽病菌エフェクターの探索2015

    • 著者名/発表者名
      熊倉直祐、Pamela Gan、津島綾子、浅井秀太、門田康弘、鳴坂真理、鳴坂義弘、高野義孝、白須賢
    • 学会等名
      平成27年度日本植物病理学会関東部会
    • 発表場所
      宇都宮市
    • 年月日
      2015-09-10 – 2015-09-11
  • [学会発表] CERK1と相互作用するE3ユビキチンリガーゼPUB4による免疫シグナリング制御2015

    • 著者名/発表者名
      高橋昌平、三浦駿希、八嶋航平、鳴坂真理、鳴坂義弘、出崎能丈、賀来華江、渋谷直人
    • 学会等名
      平成27年度植物感染生理談話会
    • 発表場所
      松山市
    • 年月日
      2015-08-24 – 2015-08-26
  • [学会発表] コアエフェクター候補遺伝子CCE1は17種の炭疽病菌で保存され、細胞死を誘導する2015

    • 著者名/発表者名
      津島綾子、鳴坂真理、Pamela Gan、熊倉直祐、浅井秀太、門田康弘、高野義孝、鳴坂義弘、白須賢
    • 学会等名
      平成27年度植物感染生理談話会
    • 発表場所
      松山市
    • 年月日
      2015-08-24 – 2015-08-26
  • [学会発表] デュアル抵抗性蛋白質システムの導入による病害抵抗性作物の創製2015

    • 著者名/発表者名
      鳴坂真理、白須賢、高野義孝、鳴坂義弘
    • 学会等名
      第33回日本植物細胞分子生物学会(東京)大会・シンポジウム
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-08-10 – 2015-08-12
  • [備考] Plant Immunity Research Group

    • URL

      http://www.kibi.ne.jp/~narusaka/RIBS_PIant_immunity/toppupeji.html

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公開日: 2017-01-06  

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