研究課題
病原細菌は数十種、病原糸状菌は千種以上の分泌蛋白質遺伝子をゲノム上に有していると推定され、これらの膨大な分泌蛋白質(エフェクター)を駆使することで、植物細胞および組織の破壊を行い、植物が本来発揮するべき抵抗性を妨害してその感染を成立させている。これに対して、植物はR蛋白質により病原体が放出する分泌蛋白質(特にAvrエフェクターという)を認識し病原体に対する抵抗性を発揮している。本課題では、このAvrエフェクターとデュアルR蛋白質の相互作用を解析し、植物ゲノムと、異なる4種の病原体ゲノム(アブラナ科野菜類炭疽病菌、ウリ類炭疽病菌、青枯病菌、斑葉細菌病菌)の生物間相互作用による適応共進化の謎に迫った。これまでに、アブラナ科野菜類炭疽病菌、ウリ類炭疽病菌、イチゴ炭疽病菌、トウモロコシ炭疽病菌、シソ炭疽病菌などの十数種の炭疽病菌のゲノムを解読した。これらのゲノム情報からアブラナ科野菜類炭疽病菌のエフェクター候補遺伝子を推測し、約300種以上の遺伝子をクローニングした。(1) デュアルR蛋白質システムが認識するアブラナ科野菜類炭疽病菌Avrエフェクターの探索と同定Avrエフェクターの候補遺伝子を破壊し、炭疽病菌に抵抗性のシロイヌナズナ生態型に接種試験した。その結果、病原性の向上は認められたものの、Avrエフェクターとする決定的なエビデンスは得られなかった。デュアルR蛋白質システムは複数のエフェクターを認識している可能性が示唆された。(2) デュアルR蛋白質による異なる4種の病原体認識機構の解明炭疽病菌のAvrエフェクターを含む4種の病原体のAvrエフェクターとデュアルR蛋白質をN. benthamianaで一過的に発現して相互作用を比較解析した結果、デュアルR蛋白質RPS4/RRS1の重要なモチーフであるP-loopが病原菌の認識から抵抗性発現において重要であることを明らかにした。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 5件)
Molecular Plant-Microbe Interactions
巻: 31 ページ: 101~111
doi.org/10.1094/MPMI-04-17-0085-FI
Genome Announcements
巻: 5 ページ: e01733~16
10.1128/genomeA.01733-16
Plant Signaling & Behavior
巻: 12 ページ: e1293218-1~8
doi.org/10.1080/15592324.2017.1293218