研究課題/領域番号 |
15K07322
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
下野 綾子 東邦大学, 理学部, 講師 (30401194)
|
研究分担者 |
浅井 元朗 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, グループ長 (40355524)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 除草剤抵抗性 / グリホサート / 遺伝子流動 / 外来種 |
研究実績の概要 |
雑草種子の主要な侵入ルートとして、海外からの輸入穀物への混入による非意図的輸入がある。主要な穀物輸入相手国であるアメリカ 合衆国(USA)では、除草剤の1つグリホサート剤使用量の増大に伴い、抵抗性雑草の進化が深刻な問題となっている。中でもグリホサート抵抗性のヒユ科ヒユ属オオホナガアオゲイトウは、2005年に報告されて以降急速に蔓延した。この報告から10年もたたずに、我が国の主要港湾の一部でも抵抗性個体が定着した。本研究ではオオホナガアオゲイトウのグリホサート剤抵抗性形質の拡散リスクを評価することを目的とし、今年度は以下を明らかにした 1)日本の主要港湾におけるグリホサート抵抗性個体の定着状況:昨年度に未調査であった中国・四国地方の港湾を調査し、オオホナガアオゲイトウの生育する港湾を新たに2つ確認した。ただし生育個体にグリホサート抵抗性は確認できなかった。昨年度と合わせてほぼ全国の主要港湾の調査を終え、2港湾において抵抗性個体が定着していることが明らかとなった。 2)港湾周辺で生育しているヒユ属雑草との交雑親和性:本種は近縁種と種間交雑をすることから、日本の港湾・市街地・畑地などですでに繁茂しているヒユ属雑草との交雑を介して、除草剤抵抗性遺伝子が拡散する可能性が懸念されている。既往文献ではハリビユとの交雑率が0.005~1.44%と報告されていることから、ハリビユとの交雑実験を行った。オオホナガアオゲイトウの雌株とハリビユ(両性花)を隣接して栽培したものの種子生産は認められなかった。 3)アポミクシの可能性:オオホナガアオゲイトウは雌雄異株の1年草であるが、アポミクシスによっても種子生産し、これもUSAでの蔓延に寄与したとされている。定着個体のマイクロサテライト領域の多型性を解析したところ、クローンとみなせる個体は見られずアポミクシスにより増殖した根拠は見いだせなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は昨年調査できなかった港湾での抵抗性個体の分布調査に加え、ヒユ属近縁種との種間交雑の可能性を評価する予定であり、当初の予定通り進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
グリホサート抵抗性オオホナガアオゲイトウが定着している港湾においては抵抗性個体の生育状況について継続調査を行う。 近縁種との種間交雑を介した抵抗性遺伝子の拡散を評価するために、オオホナガアオゲイトウのとハリビユあるいはホソアオゲイトウとの交配実験を引き続き行う。交雑個体が得られた場合には、発芽実験を行い後代の発芽率や生残率など適応度に係るパラメーターを得る。 さらにオオホナガアオゲイトウが短期間で日本の港湾に定着した要因の一つとして散布体圧(propagule pressure)について検討する。 最終年度として、抵抗性を一つのバイオマーカーとして原産地からの1次侵入地における定着の実態および今後の拡散可能性についてとりまとめる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入した機器が通常より安価に購入できたことにより次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
抵抗性個体が分布する港湾では継続してモニタリング調査を行う。その旅費に充てる。
|