研究課題/領域番号 |
15K07324
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
山下 雅幸 静岡大学, 農学部, 教授 (30252167)
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研究分担者 |
澤田 均 静岡大学, 農学部, 教授 (10183831)
宮田 祐二 静岡県農林技術研究所, 作物科, 科長 (80426452)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 総合的雑草管理 / ネズミムギ / グリホサート除草剤抵抗性 |
研究実績の概要 |
水田畦畔において斑点米カメムシ類の発生源として問題となっているネズミムギは、近年静岡県内でグリホサート抵抗性を獲得し、その防除をさらに難しくしている。そこで本研究では、1. グリホサート抵抗性ネズミムギの発生状況を詳細に調査した。その結果、抵抗性ネズミムギは,静岡県内の主要な水田作地帯において一部の水田周辺部で出現しており,特に中遠地域では全調査地点のうち半数以上の58.8%の地点で抵抗性個体が確認された。2. 水田畦畔における抵抗性ネズミムギの種子生産量を抑制する方法として草刈り時期と頻度を工夫し、その抑制効果を検証中である。3. 代替剤の有効性を検証した結果、カソロン粒剤4.5、ザクサ液剤、バスタ液剤、ワンサイドP乳剤を処理することにより、グリホサート抵抗性ネズミムギの発生量および種子生産量を低減できることが明らかとなった。さらに、土壌処理剤と茎葉処理剤の体系処理により、ネズミムギの防除効果が高まった。除草剤多剤抵抗性についても調査中である。 日本におけるグリホサート系除草剤の使用状況から考えて、静岡県以外の地域や他の雑草種でも抵抗性個体が出現している可能性が高い。本研究の成果から、難防除雑草ネズミムギの管理法だけではなく、日本における雑草管理技術の発展に寄与するものと考えられる。さらに、本研究で調査対象としたグリホサート抵抗性ネズミムギが世界で初めて水田畦畔の雑草集団から見つかったことや、世界全体における水田面積は極めて広いことから、今後も除草剤により管理される水田畦畔はアジアの途上国を中心に増加すると予想される。したがって、本研究で得られる成果は、日本のみならず世界全体においてグリホサート系除草剤に過度に依存しない総合的雑草管理技術(IWM)の確立に貢献すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水田畦畔において斑点米カメムシ類の発生源として問題となっているネズミムギについて、静岡県内でグリホサート抵抗性個体の発生状況を詳細に調査することができた。静岡県内でも地域によって抵抗性個体の発生状況が異なり、特に中遠地域で高いことを明らかにすることができた。 水田畦畔における抵抗性ネズミムギの種子生産量を抑制する方法として草刈り時期と頻度を工夫し、その抑制効果を検証することができた。 代替剤の有効性を検証するためにポット試験による処理実験を行った結果、いくつかの代替剤を処理することで、グリホサート抵抗性ネズミムギの発生量および種子生産量を低減できることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
抵抗性ネズミムギの分布拡大を防止するために、水田畦畔において確認された抵抗性ネズミムギが、耕地内部や道路端・河川敷等の非農耕地にも侵入しているかを調査し、抵抗性遺伝子の拡散経路を推定する。 前年度までに水田畦畔における抵抗性ネズミムギの種子生産量を抑制する方法として草刈り時期と頻度を工夫し、その抑制効果を検証することができたので、その実験結果を取りまとめ、今年度中に学術誌に投稿する予定である。 前年度のポット試験の結果を踏まえて、代替剤として有望な候補薬剤によるネズミムギ防除効果を現地の水田畦畔において評価するとともに、除草剤多剤抵抗性について調査する。 代替剤による化学的防除に加え、草刈り処理等による物理的防除、種子食性昆虫による生物的防除等を組み合わせた総合的雑草管理により、グリホサート抵抗性ネズミムギの個体群動態がどのように変化するか、個体群動態モデルを用いて解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時に予定していた研究分担者が研究初年度に所属機関内の人事異動により職務上研究を遂行できなくなり、後任の研究者との引継ぎ、計画打合せ等に時間を要したことや研究協力者(博士課程学生)の体調不良等で個々の実験に多少の遅れが生じ、当初の予定より消耗品等の購入が少なくなったこと、および処理実験のために借上げた圃場使用料が当初の予定より安く抑えられたために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
諸般の理由で遅れ気味であった実験については、前年度末から研究協力者(博士課程学生)も研究に復帰し、今年度は必要な実験資材等を計画的に購入し、研究が軌道に乗り始めており、早期に使用する計画である。
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