研究課題/領域番号 |
15K07330
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
上地 奈美 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門 生産・流通研究領域, 主任研究員 (40507597)
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研究分担者 |
徳田 誠 佐賀大学, 農学部, 准教授 (60469848)
湯川 淳一 九州大学, 農学研究院, 名誉教授 (80041622)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タマバエ科 / ブドウミタマバエ / ブルーベリータマバエ / ブドウトックリタマバエ / 種の同定 |
研究実績の概要 |
福島県で発生している、栽培ブドウの果実を加害するブドウミタマバエ(仮称)Asphondylia sp.について、飛来雌成虫の捕獲を試みた。昨年度に発生が認められた園地で、黄色粘着トラップの設置、ブドウ房に粘着剤(金竜)を塗布、を実施した。しかし、トラップや粘着剤を塗布した果実には成虫は捕獲されなかった。今年度は、粘着トラップ、吸引トラップの設置および見取りにより雌成虫の捕獲を試みる。そして、雌成虫が得られた場合、体内に残っている植物成分を抽出してシークエンスし、越冬植物の同定を試みる。新たに、ヤマブドウの葉にゴールを形成するブドウトックリタマバエ Cecidomyia(?) viticola のヤマブドウトックリフシが、栽培ブドウの葉に形成されているのが発見された。種の再検討が必要な種であるため、シークエンスを試みるとともに、形態観察のための成虫を得るために飼育中である。他に、東南アジアでトウガラシを加害するAsphondyliaの一種(ブドウミタマバエと同属)について新種記載をおこなった。 研究代表者の上地は、果樹茶業研究部門主催の果樹研究会の重点課題のひとつとして果樹害虫タマバエ類について話題提供をした。参加者とブルーベリータマバエやリンゴツボミタマバエに関する最新の発生情報や対策の進捗状況について意見交換した。また、研究分担者の湯川は、フロリダ州(合衆国)で開催された第25回昆虫学国際会議のシンポジウムでキーノート講演を行った。また、合衆国のスミソニアン博物館を訪問し、Raymond J. Gagne 博士のご協力のもと、博物館所蔵の模式標本を検鏡し、日本から持参したタマバエ類の上族や属、種などに関する分類学的地位を明らかにできた。研究分担者の徳田は、国内で新規発生したブルーベリータマバエ(仮称) Dasineura oxicoccana を同定し、短報として報告をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブドウミタマバエの同属種について、記載論文の発表や、発育零点や有効積算温度算出のための飼育実験を実施し、成果が上がっている。普及面においても、果樹研究会で果樹害虫タマバエ類について海外産の種も含めて紹介するとともに、新規発生の種についても情報提供をした。 ブドウミタマバエに関しては、トラップなどによって飛来雌成虫の捕獲を試みたが成功しなかった。今年度はさらにトラップ数の増加や、吸引トラップなどの捕獲方法の追加をおこない、雌成虫の捕獲を再度試みて、越冬寄主の解明を試みる。新規発生の果樹タマバエについて標本や生態情報の収集を進めているところであり、今年度も引き続き、タマバエ類に関する標本や情報収集をおこなう。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も、ブドウ園地に飛来するブドウミタマバエ雌成虫の捕獲を試みる。そして、成虫が得られれば体内の植物DNAをシークエンスして、越冬植物の解明を試みる。
当初の計画通り、果樹を加害するタマバエ類ならびに近縁種に関して、採集や飼育実験をおこない、分類学的および生態学的な知見を集積する。得られた知見を学会発表や論文にとりまとめて公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
果樹園に飛来するタマバエ成虫を捕獲し、体内に残存する植物DNAの解析により、越冬寄主の解明をすすめる予定であったが、成虫を得ることができなかった。解析に伴う試薬や消耗品の購入まで至らなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、成虫捕獲および解析のために、トラップの数や種類を増やし、また、実際に現地での見取り調査を実施する。翌年度分の予算と合わせて、トラップや試薬の購入、また、調査旅費等として支出する。
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