研究課題/領域番号 |
15K07332
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
俵谷 圭太郎 山形大学, 農学部, 教授 (70179919)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アーバスキュラー菌根菌 / 外生菌糸 / 酸性ホスファターゼ / 有機態リン酸 |
研究実績の概要 |
アーバスキュラー菌根(AM)菌の外生菌糸から浸出されるACP活性の検出とその低リン条件への応答の解明を目的とした。ネギ(Allium fistulosum L.)にRhizophagus clarusを接種した区と非接種の区を設け、30 μmナイロンメッシュで根と菌糸が伸長する菌根区画と外生菌糸のみが伸長する菌糸区画に分けられた2区画ポットで生育させた。2つのリン施肥段階(0(P0)、および0.5(P0.5) g P2O5/kg)を設けた。土壌中にムライトセラミック管を埋設し、それぞれの区画から菌糸の浸出物を含む土壌溶液を得た。アマ(Linum usitatissimum L.)毛状根にR. clarusを接種し、2段階のリン濃度(3、30 μM)の培地を含む2区画ペトリ皿で生育させた。菌糸区画の外生菌糸および培地を回収し、外生菌糸表面および浸出されたACP活性を測定した。接種区の菌根区画および菌糸区画の土壌溶液得られた外生菌糸の抽出物から187 kDaのACP活性を検出した。活性はP0区でP0.5区より高かった。菌糸区画中の外生菌糸表面および培地中のACP活性は、3 μMで30 μMより高かった。これらの結果はAM菌R. clarusの外生菌糸からのACPの浸出は低リン条件下で促進されることを示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アーバスキュラー菌根菌の外生菌糸から浸出される酸性ホスファターゼ活性が培地リン濃度の影響を受けることを明らかにした。毛状根を用いた無菌的な条件においても酸性ホスファターゼ活性が菌糸由来であることを確認した。以上により、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
土壌中の有機態リン酸の測定方法を確立し、菌根菌接種区と非接種区の栽培前後の有機態リン酸濃度を測定し、酸性ホスファターゼ活性との関係を明らかにする。酸性ホスファターゼ活性が高いアーバスキュラー菌根菌をスクリーニングする。有機物含量が高い圃場において接種試験を行い、アーバスキュラー菌根菌による有機態リン酸の有効利用を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に外生菌糸から浸出される酸性ホスファターゼによる各種有機態リン酸化合物の分解の解明を終了させ、国際会議での発表を予定していた。しかし、毛状根を用いたアーバスキュラー菌根菌の無菌培養に時間を要したため、予定していた国際会議での発表ができなかった。分析結果をまとめて平成30年9月にベルギーで開催される国際会議で発表することとする。
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