研究課題/領域番号 |
15K07335
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
下嶋 美恵 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (90401562)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リン欠乏 / 窒素欠乏 / 植物脂質 |
研究実績の概要 |
植物はリン欠乏にさらされると、生体膜を構成するリン脂質の大半を糖脂質に転換し、その際のリン脂質分解で生じたリンをより重要な生体内代謝系に利用する機構を持っている。これは、リン欠乏時の膜脂質転換と呼ばれているが、このリン欠乏時の膜脂質転換は実はリン欠乏生育時だけでなく、窒素欠乏生育時にも重要であることがわかってきた。そこで本年度は、シロイヌナズナの膜脂質生合成変異体pah1pah2やPAH1,PAH2各過剰発現体を用いて、野生株と窒素欠乏に対する応答がどう異なるのか、さらなる生化学的解析を進めた。その結果、変異体は窒素欠乏時の葉緑体チラコイド膜の損傷が激しいが、過剰発現体(pah1pah2バックグラウンドのため、相補体でもある)では野生株程度以上にチラコイド膜の損傷が抑制されていることがわかった。また、アイソトープラベルされた酢酸を用いた脂質のパルスチェイスラベリング実験により、膜脂質全般のターンオーバーの解析を行ったところ、窒素欠乏時の脂質のターンオーバーはいずれの植物体においてもあまり大きな動きの違いが見られず、しかし葉緑体チラコイド膜を構成するリン脂質で、光合成能に大きな影響を与えることが知られているホスファチジルグリセロールのラベリング率が通常条件に比べて非常に高いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変異体、過剰発現体を中心としたリン欠乏・窒素欠乏応答機構の詳細な解析は非常に進んでいる一方、変異体をバックグラウンドとして得る予定であった新規変異体の取得は、野生株種子の混入、生育設備の一時的な不調などが重なり、遅れている。後者については、平成29年度に特に力をいれて進めたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
リン欠乏・窒素欠乏応答のクロストークについては、引き続き解析を進めるが、変異体の乾燥ストレス耐性(ワックス生合成への影響)については新しい知見が得られてきた。平成29年度は、研究計画に基づき、新規因子の取得を第一の目標として目指すが、一方で変異体がなぜ他のストレスに対しても野生株とは異なる表現型を示すのか、明らかにしていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月末に、本研究に必要な試薬類を購入しようとしたところ、在庫手配が間に合わず納品が4月以降になるということで、急遽注文をキャンセルしたため、残金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度中に、上記の試薬類を購入する予定である。
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