研究課題/領域番号 |
15K07343
|
研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
森泉 美穂子 龍谷大学, 農学部, 准教授 (10220039)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 土壌有機物 / アミノ酸組成 |
研究実績の概要 |
堆肥および土壌に含まれる塩基性アミノ酸の土壌有機物の蓄積過程における役割を明らかにするために、土壌抽出物に含まれるアミノ酸を定量し、堆肥含有土壌埋設試験試料のアミノ酸組成の経時変化を明らかにした。詳細は下記のとおりである。 (1)メタンスルホン酸を用いた土壌の加水分解・アミノ酸測定法の開発 土壌抽出液を4Mメタンスルホン酸で加水分解し、試料をOPAで誘導体化し、15種類のアミノ酸を定量する方法を開発した。従来法の6M塩酸加水分解法と比較すると、土壌のリン酸緩衝液抽出物では、黄色土抽出物の加水分解率が5倍程度上昇したが、黒ボク土・灰色低地土のリン酸緩衝液抽出物および各土壌のNaOH抽出物については、加水分解率は同じかまたは数%向上しただけであった。そのため、土壌抽出液のメタンスルホン酸加水分解は、鉱質土壌では加水分解率の向上に有効であるものの、火山灰質土壌では有効性は乏しい事が分かった。これは、Al-腐植複合体などの難分解性が高いためと考えられる。 (2)堆肥含有土壌埋設試験試料のアミノ酸組成の変化 堆肥含有土壌埋設試験試料のKCl水溶液,リン酸緩衝液、NaOH水溶液抽出物に上記のメタンスルホン酸加水分解および塩酸加水分解を施し、それらのアミノ酸組成を測定した。その結果、埋設期間2年間では、顕著なアミノ酸組成の変化は認められなかった。一方、抽出液によってアミノ酸組成が異なることが分かった。特にリン酸緩衝液抽出物では、Asp・Gluなどの割合が低く、Argの割合が高いという特徴が認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の異動により、実験環境が変わっため、アミノ酸分析などのシステムを再構築する必要があり、計画よりも若干の遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
土壌有機物のアミノ酸組成は、抽出方法により異なることが明らかになったため、抽出方法による土壌有機物の特徴付けを行い、有機物の蓄積過程における塩基性アミノ酸の役割を考察する。特に、アミノ酸組成が異なるリン酸緩衝液抽出画分には、分子量数千程度のフルボ酸様物質が多く認められる。土壌有機物を分子量毎に分取し、各画分ごとのアミノ酸組成を測定し、有機物分子量とアミノ酸組成の関係を明らかにする予定である。さらに、既に測定済みの標識重窒素同位体比の結果を解析し、堆肥由来の有機態窒素の動態とそのアミノ酸組成の関係を明らかにする。 以上の結果を基に、堆肥由来有機態窒素がどのような性質の土壌成分と結合し難分解性を獲得するのかを明らかにし、有機態窒素蓄積課程における塩基性アミノ酸成分の役割を考察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の研究環境が変わったため、アミノ酸分析などの分析システムを再構築するために時間を要しており、研究の進展が若干遅れている。そのため、本年度に計画中であった分子量毎のアミノ酸組成が未測定であり、それに用いる資材に要する未使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度、分子量毎のアミノ酸測定を行う予定であり、未使用分はそれらの測定に充てる予定である。
|