研究課題/領域番号 |
15K07346
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
大和田 琢二 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (90211804)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ダイズ根粒菌 / TetR family / ゲニステイン / 共生 |
研究実績の概要 |
ゲニステインで特異的に強く誘導発現するダイズ根粒菌(Bradyrhizobium japonicum)TetR family遺伝子の共生関連遺伝子の発現への関与を調べるため、構築された多剤排出ポンプ破壊株(bll7019-bll7021欠失株)と転写調節遺伝子破壊株(blr7023欠失株)の培養菌液にゲニステインを添加し、3~20時間後の共生関連遺伝子(nodD1, nodD2, nodC, nodW, ttsI)の誘導発現量を定量的RT-PCRにより親株と比較した。その結果、多剤排出ポンプ破壊株では、nodCの発現量が6~12時間で顕著に高かった(6時間後の発現量:親株60.2倍、破壊株158.4倍;12時間後の発現量:親株11.3倍、破壊株109.0倍)。また、6~12時間後におけるnodWの発現量はnodD1/D2よりも高い傾向を示したことから、nodCの高い発現量がnodWにより強く依存している可能性が示唆された。 一方、転写調節遺伝子破壊株では、nodCの発現量のピークが親株の6時間後に対し12時間後まで遅滞し、その発現量は親株よりも顕著に高かった(破壊株の発現量:6時間後56.7倍, 12時間後75.0倍)。また、他の遺伝子全ての発現量のピークも親株の6時間後に対し12時間後まで遅滞した。 以上の結果は、多剤排出ポンプの破壊によるゲニステインの細胞内取り込みの早期化、また、転写調節遺伝子の破壊による排出ポンプの恒常的な作動によるゲニステインの細胞内取り込みの遅滞が生じたため、nodCで代表される共生遺伝子の発現量とその誘導時間が影響を受けたと考えられ、TetR family遺伝子は共生の初期過程で細胞内ゲニステイン濃度を共生遺伝子の発現に最適な濃度に調整している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宿主ダイズから放出されるフラボノイド化合物のゲニステインによって、特異的に強く誘導発現するダイズ根粒菌TetR familyの共生への関与を明らかにすることを目的とし、当該年度までに以下の結果が得られた。1)構築されたTetR family転写調節遺伝子(blr7023, bll7024)の破壊株を用いて、ゲニステインによるTetR family遺伝子の誘導発現における転写調節遺伝子の役割を調べた結果、主にblr7023の産物がTetR familyのリプレッサーとして機能していることを明らかにした。2)当該年度はTetR family遺伝子の共生関連遺伝子の発現への関与を調べるため、構築された多剤排出ポンプ破壊株(bll7019-bll7021欠失株)と転写調節遺伝子破壊株(blr7023欠失株)のゲニステインによる共生関連遺伝子(nodD1, nodD2, nodC, nodW, ttsI)の誘導発現量を定量的RT-PCRにより親株と比較した。その結果、多剤排出ポンプの破壊によりゲニステインの細胞内取り込みが早期化しnodCの誘導発現量が向上することを示すとともに、nodCの高い誘導発現量はnodWに依存している可能性を示した。一方、転写調節遺伝子破壊株では、排出ポンプが恒常的に作動することから、ゲニステインの細胞内取り込みが遅滞し、nodCで代表される共生遺伝子の誘導発現が遅れることを示した。 以上、TetR family遺伝子は共生の初期過程で多剤排出ポンプにより細胞内ゲニステイン濃度を共生遺伝子の発現に最適な濃度に調整している可能性を明らかにし、研究の目的はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの達成度はおおむね順調に進展しているため、今後の研究は、交付申請書に記載した研究実施計画に沿って推進する計画である。即ち、構築されたTetR family遺伝子破壊株のゲニステイン感受性、並びに根粒内の感染率や競合能などの根粒形成への関与を親株と比較し、宿主ダイズから放出されるゲニステインによって、特異的に強く誘導発現するダイズ根粒菌Bradyrhizobium japonicum TetR family領域の共生への関与を明らかにする計画である。
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