研究実績の概要 |
1)ダイズ根粒菌の転写調節遺伝子破壊株(Δblr7023, Δbll7024)のTetR family構造遺伝子のクローンレベルでの発現プロファイルは、Δblr7023ではゲニステイン(GEN)非存在下でもGEN存在下の親株と同様だったが、Δbll7024では有意に発現しなかった。更に、構造遺伝子(bll7019、blr7029)もΔblr7023ではGEN存在下の親株と同様に発現したが、Δbll7024では発現しなかったことから、blr7023産物がリプレッサーとして機能していると考えられた(平成27年度)。 2)Δblr7023と多剤排出ポンプ破壊株(Δbll7019-bll7021)の共生関連遺伝子のGEN誘導発現量を親株と比較した結果、Δbll7019-bll7021ではnodCの発現量が顕著に高く、またnodWの発現量はnodD1/D2よりも高かったことから、nodW依存のnodC発現が示唆された。Δblr7023のnodC発現量は親株よりも高かったが発現が遅滞したことから、多剤排出ポンプの破壊によるGEN取り込みの早期化と転写調節遺伝子の破壊による排出ポンプの恒常的作動によるGEN取り込みの遅滞が示唆された(平成28年度)。 3)GEN感受性は、Δbll7019-bll7021では高くΔblr7023では低かったことから、多剤排出ポンプはGEN排出に機能していると考えられた。根粒原基の形成はΔbll7019-bll7021では早期化し、Δblr7023では遅延する傾向があった。また、根粒サイズと根粒菌の占有率はΔbll7019-bll7021ではともに減少しΔblr7023では増加したが、Δblr7023の競合能は著しく低下した。以上の結果は、TetR family遺伝子は細胞内GEN濃度を調整し共生関係をチューニングしている可能性が示された(平成29年度)。
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