研究課題
医療用ナノ粒子は、蛍光イメージング、MRI、中性子捕捉療法、磁気温熱療法、薬物送達系(DDS) としての利用が期待されている。MRIやCTでは固体ナノ粒子がイメージング試薬として利用できるが、静脈内に投与したナノ粒子が肝臓や脾臓などの細網内皮系(網内系)に捕捉され、標的組織へ送達できないことが課題となっている。これまでに申請者は、糸状菌の細胞壁多糖α-1,3-グルカン(AG)およびハイドロフォビン(HP)には免疫刺激性のβ-グルカン類を被覆する機能があることを見出している(ステルス機能)。本研究は、糸状菌由来の新規ステルス素材であるAGおよびHPを材料として、生体内で安定な金属ナノ粒子に糸状菌の細胞表層を模倣してステルス機能を賦与した新規医療用ナノ粒子を創成することを目的とする。本目的を達成するために行った平成29年度の研究内容は以下の通りである。1. AGおよびAGオリゴ糖の酵素合成:昨年度に引き続き、糖転移酵素によるAGおよびAGオリゴ糖合成を行った。また、合成したAGオリゴ糖を用いてナノ粒子へのオリゴ糖吸着条件を検討した。2.麹菌におけるガラクトサミノガラクタン(GAG)分析:水溶性バイオフィルムを構成するヘテロ多糖GAGは、ステルス能を有することが報告されている。麹菌にもGAG生合成遺伝子が保存されていたことから、麹菌において生産されるGAGを分析した。また、AGとGAGの欠損株を作製し、GAGが麹菌における菌糸接着因子であることを明らかにした。3.AGおよびGAGの免疫応答性評価:麹菌におけるAGおよびGAG欠損株を用いて、菌糸の免疫細胞応答性を評価した。その結果、AGとGAGは相加的に菌糸細胞にステルス機能を賦与していることが示唆された。
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Journal of Fungi
巻: 3 ページ: 63
doi:10.3390/jof3040063
Journal of Applied Glycoscience
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doi: 10.5458/jag.jag.JAG-2017_004