研究課題/領域番号 |
15K07351
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新井 博之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70291052)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脱窒 / 光合成 / 一酸化窒素 / 微生物 |
研究実績の概要 |
好気性酸素非発生型光合成細菌Roseobacter denitrificans OCh114株は嫌気条件下において、硝酸イオンなどの窒素酸化物を代替電子受容体とした硝酸呼吸(脱窒)により生育することが可能である。一般的に細菌における脱窒関連遺伝子の発現制御は、DNRなどの一酸化窒素(NO)に応答する転写調節因子によって制御されている。DNRはヘムを補因子としてNOを感知することが知られているが、OCh114株はDNRタイプの転写調節因子をコードする遺伝子を2個(dnr1とdnr2)持っており、両方が脱窒による嫌気的生育に必要とされることを明らかにしている。本年度はdnr1とdnr2の単独破壊株、二重破壊株および相補株を用いて、各遺伝子の発現解析を行った結果、DNR1がDNR2の発現を正に制御し、DNR2が脱窒に関わる亜硝酸還元酵素とNO還元酵素の発現を直接誘導するという、カスケード制御系を構成していることが明らかになった。OCh114のエネルギー代謝に関わると予想される、酸素を感知する転写調節因子FnrLの変異株を用いて遺伝子発現解析を行った結果、FnrLはdnr2と脱窒関連遺伝子の発現制御に関与していた。これは、FnrLがヘム生合成系の遺伝子発現を制御することにより、間接的にDNRの活性化に必要であるためと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は脱窒遺伝子発現のカスケード制御系における2つのDNRの機能分担を明らかにした。2つのDNRの感知シグナルに関する明確な結果は、異種発現系の構築途中のため、まだ得られていないが、酸素応答転写調節因子FnrLの脱窒への関与についての解析が進捗したため、全体としてはほぼ予定通り進捗したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
OCh114株の脱窒遺伝子発現にはDNRタイプの転写調節因子が2個(DNR1とDNR2)必要とされる。DNR1とDNR2の機能上の違いを明らかにするために、両者が感知するエフェクター、および、両者が認識するプロモーター配列の解析を行う。エフェクターの解析には、DNR1またはDNR2を他の菌で異種発現したアッセイ系を構築し、DNR依存性プロモーターを活性化する物理化学的要因を探索する。プロモーター配列の解析は、異種発現したDNR1およびDNR2タンパク質を用いたゲルシフトアッセイ等により行う。
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