研究課題/領域番号 |
15K07353
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀内 裕之 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00209280)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糸状菌 / 二次代謝 / Aspergillus |
研究実績の概要 |
これまでに糸状菌Aspergillus nidulansにおいてプロテインキナーゼC(PKC)をコードする遺伝子pkcAを高発現させる株、pkcAが温度感受性となる株を用いてpkcAの機能を人為的に制御することにより、様々な二次代謝産物生産に関わると考えられる遺伝子クラスターの発現が変化することを見出していた。そこで本研究では糸状菌に於ける新規二次代謝産物の生産を試みることと、PKCによる二次代謝産物の発現制御機構を分子レベルで解明することを目的としている。 まずpkcAの高発現株と野生株を同様の条件で培養し、それらの培養液についてLC-MS/MSにより解析することによりpkcA高発現株でのみ見られるピークを中間産物由来と考えられるものも含めて20種程度同定した。これらの中には既知の二次代謝産物と同様のピークと考えられるものも存在したが、大部分は未知の化合物であることが示唆された。また、pkcAの高発現により発現が誘導される二次代謝産物クラスターの一つについて、その遺伝子の破壊株を作製し二次代謝産物生産への影響を検討したところ、LC-MS/MSにおいて破壊株特異的に消失するピークが存在しその対応関係が明らかとなった。 一方、A. nidulansが生産する二次代謝産物ステリグマトシスチン(ST)の生産が抑えられることが明らかになっていたため、そのメカニズムについて解析を行った。二次代謝産物の生産制御にはエピジェネティックな機構が関与していることが示唆されていたことから本年度はpkcAを高発現できる株においてヒストンの脱アセチル化に関わるhdaA、メチル化に関わると考えられるclrDの破壊株を作製しその効果を検討したが、どちらの株においても再現性のある結果が得られず、さらなる条件検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究によりpkcAの高発現により新規と考えられる二次代謝産物が実際にA. nidulansで生産されていることがあきらかとなり、その生産に関わる遺伝子クラスターについても明らかになりつつある。STの生産機構についてもエピジェネティックな制御に関わる遺伝子の破壊株を作製してその効果を検討中であり、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はpkcA高発現下において新規に生産される二次代謝産物の単離・精製を行い、その構造決定を行うとともに、その二次代謝産物生産に関わる遺伝子クラスターを同定し、そのクラスターに含まれる個々の遺伝子の機能を明らかにする。また、STの生産抑制のメカニズムに関しては、エピジェネティックな制御に関わる遺伝子破壊の効果を検討するとともに、クロマチン構造の変化についても検討する。
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