研究課題
S. marcescens 2170株の、キチン分解利用と昆虫病原性に対するCBP21蛋白質の重要性の解明を試みた。Allelic Exchangeにより染色体上のcbp遺伝子を破壊し、CBP21蛋白質の欠損株(Δcbp)を取得した。また、低コピープラスミドと構成的プロモーターを用いて、Δcbpの相補株Δcbp/pcbpを構築した。これらの欠損株及び相補株と野生株のキチン分解利用と昆虫病原性を比較した。高結晶性β-キチン微小線維またはコロイダルキチンを分散させた寒天平板培地上でこれらの株を培養したところ、Δcbp株はいずれの基質でも野生株に比べ小さく不明瞭なクリアゾーンを形成した。cbp相補株はβ-キチン微小繊維を含む培地で野生株よりも大きく明瞭なクリアゾーンを形成し、コロイダルキチンでは小さく不明瞭なクリアゾーンを形成した。さらにフレーク状キチンとコロイダルキチンを炭素源として液体培養したところ、cbp相補株が最もよく生育し速やかにフレーク状キチンを分解し、Δcbp株は生育も分解も顕著に遅かった。コロイダルキチン培養ではΔcbp株と野生株の生育速度はほぼ同等で、相補株の生育が最も悪かった。cbp相補株はCBP21を過剰に発現し、キチナーゼの発現量が低いことから、より天然状態に近いキチンの分解利用においてCBP21が特に重要であることがわかった。同時に、キチン分解細菌が生産する分解酵素の比率が必ずしも最適でないという非常に興味深い可能性が示唆された。また、昆虫病原性に対するCBP21蛋白質の欠損及び相補の影響を、腸管注射および食餌投与による経口感染と血液感染の3つの感染経路によりカイコに投与し、病原性への影響を調査した。しかし、いずれの感染経路でもCBP21の欠損による昆虫病原性の低下は観察されず、今回の実験からはCBP21の昆虫病原性への関与を示すことができなかった。
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