研究課題/領域番号 |
15K07358
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木谷 茂 大阪大学, 生物工学国際交流センター, 准教授 (10379117)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 抗生物質生産 / 放線菌 / ブテノライド型シグナル / 潜在二次代謝 |
研究実績の概要 |
放線菌は多彩な二次代謝産物を生産する能力をゲノムにコードする一方、意外にも、それらの能力はほぼ休眠状態にある。これらの潜在能力を開拓できれば、限られた生物資源から新規の有用物質を高確率に発見できると考えられる。研究代表者は、放線菌二次代謝を誘導する新規シグナル物質(ブテノライド型シグナル)を単離し、新たな二次代謝制御系を報告している。本研究では、1.ブテノライド型シグナル制御系の人為的操作による休眠物質の生産覚醒化とその生合成系の解明、2.本制御系を有する放線菌種の同定とその二次代謝系の解明、を主たる目的とする。 本年度は、まず、ブテノライド型シグナルの受容体様遺伝子の機能喪失により生産覚醒する、セルロース生合成阻害剤フトキサゾリンの生合成遺伝子について、解析した。フトキサゾリンの基本骨格に基づいて、予想される生合成遺伝子群を複数、機能喪失させたが、いずれもそのフトキサゾリン生産能に変化はなかった。したがって、フトキサゾリン生合成には予想困難な新規酵素が関与している可能性が示唆された。現在、ゲノム大規模欠失株を構築しており、そのフトキサゾリン生産能の解析により、フトキサゾリン生合成に関与するゲノム領域を限定化している。 2つ目に、同定していたブテノライド型シグナル活性を示す放線菌において、シグナル制御系の二次代謝における機能について解析した。シグナル生合成に関与する遺伝子を同定し、その機能破壊株を構築した結果、ブテノライド型シグナル活性が顕著に低下するともに、代謝物プロファイルが大きく変化した。このような変動を示す放線菌種を複数、見出していることより、ブテノライド型シグナル制御系は放線菌において、広く分布する可能性が示されつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、フトキサゾリン生産に関与するゲノム領域の限定化は順調に進んでいる。また、他の休眠覚醒化物質の生合成遺伝子については、異種放線菌発現系を利用したことにより、その機能解析が進んでおり、生合成中間体の獲得を経て、生合成系が明らかになりつつある。同時に、覚醒化物質の類縁体の創出も進んでいる。 ブテノライド型シグナル制御系を有すると推定される放線菌を、予想外にも、複数種、見出したことより、今後、放線菌二次代謝におけるブテノライド型シグナル制御系の普遍性が明らかになると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム大規模欠失株におけるフトキサゾリン生産能解析を経て、フトキサゾリン生合成に関与する遺伝子群を同定する。ブテノライド型シグナル生合成遺伝子破壊株の表現型を、遺伝学的と化学的な相補解析の両面により証明すると同時に、ブテノライド型シグナルが制御する化合物を同定する。
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