研究課題/領域番号 |
15K07359
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
石川 周 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (30359872)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞壁溶解酵素 / 細胞の繊維状化 / 細胞分化 / 枯草菌 |
研究実績の概要 |
窒素源依存的な繊維状化システムを探るため、枯草菌をグルタミン酸を含む、あるいは、含まない最少培地において培養し、転写プロファイルをトランスクリプトーム解析により比較することにした。しかし、通常のフラスコ培養ではグルコースを単一炭素源とした場合、培地の酸性化が問題となった。そこで、ジャーファーメンターで培養液のpHを中性にコントロールした条件で培養を行った。転写プロファイルを比較した結果、グルタミン酸を含む培養では細胞分化に関わる遺伝子群(AbrBレギュロン、Spo0Aレギュロン、SigHレギュロン等)、および、おおくの細胞壁溶解酵素の転写に違いが見られた。 そこで、lytF/lytE/cwlSの3重欠損株に、細胞分化を抑制する変異、あるいは、上記3つの細胞壁溶解酵素とオーバーラップする活性を持つ可能性が指摘されている細胞壁溶解酵素の遺伝子破壊をさらに導入した。両方の変異株において、最少培地での培養で増殖阻害が観察された。増殖阻害を抑制する変異株をそれぞれ取得したところ、前者では最少培地においても繊維状化がみられたが、一方、後者では繊維状化しないが増殖が回復するという違いが見られた。抑制変異を次世代シーケンサで同定したところ、増殖に必須な細胞壁溶解酵素CwlOとLytE(同時に破壊した場合のみ致死)を制御する二成分制御系WalRKのセンサーであるWalK、あるいは、WalRKの活性を制御すると考えられているWalIに、それぞれ変異が見られた。このことから、最少培地においても繊維状化するためには、WalRKの活性のコントロールが鍵である可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画のうち「トランスクリプトーム解析:窒素源依存的な転写制御を行う転写因子の抽出」と、「窒素源依存的な繊維状化の鍵となる転写因子の特定」に関しては、WalRKの活性制御が最少培地における(窒素源依存的な)繊維状化の鍵であることを突き止めたので目的を達成している。一方、「GeF-seq解析:窒素源依存的な繊維状化の鍵となる転写因子の全ゲノム上の結合部位を決定」に関しては、WalRKシステムの転写因子であるWalRのGeF-seqを進めているが、結合部位の決定には至っていない。しかし、最少培地でも繊維状化することができる抑制変異株を取得できたので、「おおむね順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
WalRKシステムの転写因子であるWalRのGeF-seqを行い、直接制御している遺伝子群を特定する。その上で、全ての遺伝子欠損、もしくは、過剰発現変異をlytF/lytE/cwlSの3重欠損株に導入し、繊維状化するかを検証し、繊維状化に直接関わる遺伝子を特定する。この情報をもとに、細胞の繊維状化を自在にコントロールできる細胞の構築する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、次世代シーケンサを使用し高い実施費用が予測されたGeF-seqを実施しておらず、また、当初予定していた研究成果発表を行っていない。そのために、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の目的に加え、さらにGeF-seqと成果発表を行うことにより、使用する。
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