研究実績の概要 |
申請者らによる先行研究結果から、plg7遺伝子の破壊は細胞質分裂不全により細胞内に複数の隔壁を有する形で致死となる可能性が示された。そこで、生細胞が死に至る過程を詳細に観察する目的で、改良型デグロンシステムを用いたplg7のコンディショナルノックアウト株の作成を行った。デグロンシステムとは、植物ホルモンであるオーキシンによって植物細胞において活性化されるタンパク質分解機構を酵母に適用した方法であり、標的とするタンパク質に分子標的(デグロン)を付加することでオーキシン依存的にユビキチン化され短時間に分解されるシステムである。(Nature Methods, 6, 917, 2009)。改良型デグロンシステムでは、さらにチアミンの添加によって転写をシャットダウンできるnmt81プロモーターを用いている。(BMC Cell Biology, 12:8, 2011)。27年度にはplg7を標的とした改良型デグロンシステムの構築を行なった。また、28年度より新たなコンディショナルノックアウト株としてurg1プロモーターによるplg7の制御を試みている。urg1遺伝子は、ウラシルの除去により転写が減少することが報告されており、urg1座位のコーディング領域をplg7に置き換えることでコンディショナルノックアウト株の構築を目指す(Gene, 484, 75-85,2011)。これらのシステムを用いてplg7の細胞内量をコントロールできるようになることで、細胞質分裂と脂質分解酵素とのこれまでに知られていない関連性が明らかになるものと考える。本研究においては、脂質分解酵素であるplg7の細胞内における基質の同定に関しても視野に入れて計画を立てている。その場合、構築しているコンディショナルノックアウト株を用いることで、plg7の有無と連関して変動する細胞内脂質を同定することで基質同定の糸口がつかめるものと考える。
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