研究課題/領域番号 |
15K07365
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
春日 和 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (40315594)
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研究分担者 |
牟田口 祐太 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30724314)
志村 洋一郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (60332920)
小嶋 郁夫 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (90315581)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リグノセルロース / 抗生物質生産 / Streptomyces属放線菌 |
研究実績の概要 |
本研究では、リグノセルロース(LC)資化能に優れ、LCを発酵原料とした抗生物質生産能を有する放線菌を獲得し、LCを発酵原料として有用資源化することを目的とする。H27年度までに、セルロース分解活性が強いStreptomyces属放線菌株11株を選抜した。このうちY810およびY1826の2株はカスガマイシン(KSM)生産プラスミドpKSM109の導入によりKSM生産能を付与できた。H28年度は以下の成果を収めた。 Y810およびY1826を含む11株を3回培養し、培養上清中の総セルラーゼ活性および総キシラナーゼ活性を測定し、セルロース分解の基準株C42の活性と比較した。C42並びにY810とY1826に比べ、Streptomyces galbus Y2944とY3042、S. achromogenes Y2939は両活性が顕著に高く、これらを高度LC資化性放線菌として選抜した。 最も高い分解活性を示したY2944のゲノム解読を行い、高分解能を担う遺伝子系を明らかにすることにした。Y2944のゲノム解読には他の放線菌同様に繰返し配列が含まれると予想されたため、これを克服可能なPac Bio RSIIシステムを採用し、H29年2月にタカラバイオ社にゲノム解読を外注した。年度末までに、ライブラリーの作成およびシークエンシングまで進行した。 高度LC資化性放線菌3株でpKSM109の導入実験を行い、Y2944のみpKSM109を導入できた。Y810とY1826の導入株とともに、微結晶性セルロースおよびスギ木材粉末を原料としたKSM生産実験を行ったところ、Y2944の導入株のKSM生産量は他の2遺伝子導入株に比べて明らかに低かった。セルロースおよびキシラン分解活性が高いY2944の物質生産能の低さについては今後検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ゲノム解読の対象とするリグノセルロース資化性放線菌の選抜と、ゲノム解読のための準備(試料調製法の検討)などで時間がかかってしまったため、H28年度末までにゲノム解読を完了することができなかった。しかし、これまでで最も高いセルロースおよびキシランの分解能を持つY2944を選抜することができ、H29年度4月末にこの株のドラフト配列が得られ、現時点では順調に進行している。 また、Y2944を宿主とした抗生物質生産能が低かったことは期待外れの結果であった。しかし、Y1826を宿主とすることにより高い抗生物質の異種生産が可能であるため、Y2944のLC分解遺伝子群をY1826に導入することにより、「高度LC資化性能を有し高い抗生物質の異種生産能をもつ菌株の育種」などの軌道修正も必要である。
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今後の研究の推進方策 |
(1) Y2944のゲノム解読とLC資化関連遺伝子群の解明 4月末にY2944ゲノムのドラフト配列が得られており、あと2ヶ月で全ゲノム解読および遺伝子予測まで終了する予定である。また、ドラフト配列より既に研究対象とする遺伝子群を予備的に探索し始めている。本菌株の推定LC資化関連遺伝子群をH29年度前半期に網羅し、その後は①推定LC資化関連遺伝子群の発現の解析、および②推定LC資化関連遺伝子群のクローン化と遺伝子産物の機能解析、を行い、Y2944の高度LC資化能を担う遺伝子群の解明を順調に進められると期待している。 (2) 高度LC資化性能を有し、高い抗生物質の異種生産能をもつ菌株の育種 Y2944自体は高い抗生物質の異種生産能を持たないと考えられたため、(1)の高度LC資化能を担う遺伝子群をY1826に導入してY1826のLC資化能をさらに向上させることにより、「高度LC資化性能を有し、高い抗生物質の異種生産能をもつ菌株の育種」が実現可能か検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、H28年度内に高度LC資化性放線菌のゲノム解読を完了する予定であったが、年度内にドラフト配列の解読を完了することができなかった。そこで、そのための経費(772,220円)を次年度会計に残す必要があった。実際に、次年度4月にゲノムのドラフト解析が完了したため、その料金の経費執行を4月末に開始した。 また、PacBioシステムは、ゲノム解読(ドラフト解析)の終了後に、データをリファインするフィニッシング解析が必要であり、さらに効率よい研究の進展のためには遺伝子予測解析も必要である。そのため、次年度使用額をあえて残した。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度4月にY2944ゲノム解読のドラフト解析が終了した。このための解析料金に772,220円を当てる。さらに、その後、ドラフト配列のフィニッシング解析に16万円ほどかかるため、残額はこの費用に当てる。
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