研究課題/領域番号 |
15K07368
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
兼崎 友 東京農業大学, その他部局等, 研究員 (70380293)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高温耐性 / 適応進化 / シアノバクテリア / リシーケンス解析 |
研究実績の概要 |
シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942 高温耐性変異株について、寒天プレート培地上での長期間の高温順化培養により、通常の生育限界温度を超えた突然変異株を作出し、さらに高温での連続培養を継続し、生育限界温度の上昇が見られる度にDNAを抽出し、次世代シーケンサーによりその全ゲノム配列をリシーケンスして変異部位の特定をおこなった。液体培養条件でも生育比較をおこなった結果、野生株の上限生育温度である43℃で野生株よりも速い増殖速度を示した。現在までに分子生物学的な解析により、培養開始後初期の生育限界温度の突破に関った遺伝子座の同定を進めた結果、2つの遺伝子への突然変異が高温耐性付与に関わる可能性が高いことが明らかとなった。これらの遺伝子には挿入/欠失変異が生じており、遺伝子の破壊を伴っていたため、これを再現するために野生株の同遺伝子を薬剤耐性カセットで破壊し高温耐性能を検証した。その結果、これらの遺伝子破壊株は野生株が致死となるような高温ショックに対し耐性を示すことが明らかとなった。これらの遺伝子についてさらに機能解析を進めると共に、他の生理的データの取得を進めている。また、長期の高温順化培養は現在も継続中であり、突然変異株の生育限界温度は継続的に上昇しているため、引き続き培養を試みる。また本研究に関連し、高温誘導性遺伝子の発現制御因子に関する解析や、関連するシアノバクテリアのゲノム解析についても解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生育限界温度を超えた突然変異株を定期的にフリーズストック化することで、耐性獲得の途中段階の株を再確認しながら研究を進めている。最初の突然変異により生育限界温度の大きなジャンプアップが起き、その後の変異の蓄積により徐々に生育限界温度が上昇している可能性が示唆されているが、遺伝子破壊などの分子生物学的解析により、少なくとも2つの遺伝子座への変異が最初期の高温耐性付与に関った可能性が高いことが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
長期の高温順化培養は現在も継続中であり、突然変異株の生育限界温度はさらに継続的に上昇している。これらについては引き続きリシーケンス解析を継続する。同定した原因遺伝子の機能解析、トランスクリプトーム解析を進め、その変異によりどのような遺伝子発現変動やタンパク質発現変動が生じたかを調べる。また種々の生理学的データの取得についてさらに解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の中で特に費用がかかるトランスクリプトーム解析について、年度内に確実な実験条件が定まらなかったため、今年度は予備実験までに留め、次年度に予算を回した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の大規模なトランスクリプトーム解析とリシーケンス解析で完全に使い切る計画である。
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