研究実績の概要 |
世界人口の急増によるエネルギー、食糧等の資源需要増は、資源争奪、価格の乱高下などの問題が引き起こされ、このような状況は、油脂においても起こっており、日本の低い油脂自給率は大きな懸念材料となっている。油糧植物による油脂生産の向上は、環境保護や日本の状況を考慮すると望ましくなく、別の方法に期待がかかる。本研究では、1つの可能性として、非可食バイオマス由来の糖を資化して細胞内に油脂(トリアシルグリセロール, TAG)を蓄積する油脂酵母Lipomyces starkeyiによる油脂生産技術開発に注目した。L. starkeyiを産業的に利用するためには、油脂生産性の向上が1つの鍵となっている。そこで本研究では油脂生産に関与する重要遺伝子の抽出を行い、その遺伝子の油脂生産性への関与を明らかにすることを目的とした。 昨年度までに、L. starkeyi油脂高蓄積変異株の取得と野生株の油脂合成・分解経路の遺伝子の発現解析を行い、油脂合成及び分解に大きく関与する遺伝子を予測した。さらに非相同的に遺伝子を染色体上に導入するタンパク質遺伝子を欠失させた株を活用することにより、高効率遺伝子相同組換えシステムの構築に成功した。 本年度は、L. starkeyi油脂高蓄積変異株と野生株の油脂合成・分解経路の遺伝子の発現挙動比較解析を行い、油脂合成に大きく関与する遺伝子(アシルCoA合成系遺伝子)の抽出を行った。アシルCoA合成系遺伝子のL. starkeyi野生株への導入は、油脂生産性を向上させることを明らかにした。
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