研究課題/領域番号 |
15K07377
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
森 茂太郎 国立感染症研究所, 細菌第二部, 室長 (60425676)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 結核菌 / 立体構造解析 / NAD合成経路 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、大きく分けて次の2つの研究を進めることを目的としている。(1)結核菌のNAD生合成経路において機能未知とされているタンパク質の機能構造解析、並びに(2)ピラジナミド耐性結核菌(NAD生合成において重要な酵素であるPncAを変異させた株)において機能しているNAD生合成経路の代償的経路の解析。 (1)本年度は、昨年度までに大腸菌内で可溶性タンパク質として発現させた結核菌由来Rv3393についてその酵素学的機能を解析した。その結果、Rv3393はアミノ酸配列のモチーフ解析から予想された通りヌクレオシド加水分解活性を示すことを明らかにした。また、昨年度までに可溶性タグを付加させることによって可溶性タンパク質として発現させることができた、Rv0212c、Rv1901、及びRv3199cについて付加したタグを切断する条件について検討を行った。また、関連する酵素としてMycobacterium avium由来のヌクレオチド加リン酸分解酵素の立体構造を決定した。本酵素は野生型では結晶化が困難であったが、2次構造予測でdisorder領域として予想されたN末部分(約20残基)を削除した変異型を用いることにより、結晶化を行うことが可能であった。本酵素の立体構造は結核菌由来ヌクレオチド加リン酸分解酵素の立体構造と非常に類似していた。従って、これまでに同定した結核菌由来ヌクレオチド加リン酸分解酵素の新規阻害剤は、M. avium由来ヌクレオチド加リン酸分解酵素の活性も阻害することが予想された。 (2)昨年度から引き続きピラジナミドを用いた突然変異誘発によってpncA遺伝子が変異した結核菌の作出を試みた。これまでにピラジナミドに耐性を示す結核菌を複数取得することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、結核菌のNAD生合成経路において機能未知とされているタンパク質の機能構造解析、並びにNAD生合成経路の代償的経路の解析を目的としている。 結核菌のNAD生合成経路において機能未知とされているタンパク質の機能解析については、Rv3393の酵素学的機能を明らかにした。また、関連するMycobacterium avium由来ヌクレオチド加リン酸分解酵素の立体構造を決定し、結核菌由来ヌクレオチド加リン酸分解酵素の立体構造との比較を行った。 一方、結核菌の生育が遅いため時間がかかったものの、NAD生合成経路の代償的経路の解析に向けてピラジナミド耐性結核菌を作出することができた。 以上の状況から、現在までの進捗状況についておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、結核菌のNAD生合成経路において機能未知とされているタンパク質の機能構造解析、並びにNAD生合成経路の代償的経路の解析を目的としている。 結核菌のNAD生合成経路において機能未知とされているタンパク質の機能構造解析では、可溶性タグを切断した状態でのRv0212c、Rv1901、及びRv3199cの酵素学的諸性質の決定を試みる。また、構造未知である標的タンパク質(Rv0212c、Rv1901、Rv3199c、及びRv3199c)について結晶化条件の検討を行い、得られた結晶を用いてX線結晶構造解析により立体構造を決定する。 一方、NAD生合成経路の代償的経路の解析においては、これまでに取得したピラジナミド耐性結核菌を用いて次世代シーケンサーによるRNA-Seqなどを行うことにより、pncA遺伝子の変異を補う形で発現している遺伝子の同定などを進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが平成29年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。 平成28年度分についてはほぼ使用済みである
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次年度使用額の使用計画 |
上記のとおり。
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備考 |
Shigetarou Mori. Crystallographic analysis of diadenosine tetraphosphate phosphorylase from Mycobacterium tuberculosis H37Rv complexed with ADP. Photon Factory Activity Report 2015 #33 (2016) B
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