研究課題
植物においてシグナル物質は配糖化されるとで不活性化されるが,β-グルコシダーゼはこの不活性体を加水分解することで再び活性化させる。イネにはジャスモン酸の水酸化物であるつべロン酸の配糖体ツベロン酸グルコシド (TAG) を加水分解するβ-グルコシダーゼが2種類 (TAGG1とTAGG2) 存在する。このうちTAGG2は、TAGG1と高い配列同一性を持つがTAGよりもサリチル酸の配糖体サリチル酸グルコシド (SAG) に高い加水分解活性を示す。すなわち、TAGG2は未解明であるサリチル酸配糖体の加水分解による活性化に寄与している可能性がある。本研究では、まず、TAGG2におけるSAGに対する高い加水分解活性に重要な構造について検討した。TAGG1との構造比較に基づき注目したTAGG2のアミノ酸残基をそれぞれTAGG1型に置換した変異酵素を解析した. H252NはTAGに対し野生型酵素とほぼ同等の活性を示したが, SAGに対する反応効率はWTの28%に低下した.すなわちH252はOsTAGG2においてSAGへの高活性に重要なアミノ酸残基あると考えられた. L192M,変異に加えて直前にGlyを挿入したL192M+GではTAGと比較してSAGに対する活性が大きく低下した.Glyの挿入により基質の近くに配置されたMがSAGとの結合を妨げたと推測された.次にTAGG2遺伝子の過剰発現体、RNAiによる発現抑制体、局在性解析のためのGFPおよびGUS遺伝子をレポーター遺伝子としてTAGG2のORFおよびTAGG2プロモーターにそれぞれ連結した合成遺伝子を導入した組換えイネを作出した。それぞれの形質転換体のための発現プラスミドを構築し、アグロバクテリウムを介した方法によりイネを形質転換した。抗生物質耐性を指標として分離した形質転換体の継代を進めている。
2: おおむね順調に進展している
TAGG1との構造比較に基づき推定し、作製した変異酵素の機能解析を通じてTAGG2におけるサリチル酸グルコシドに対する高い選択性に重要な構造因子を決定することができた。また、解析を予定している各種イネ形質転換体についても順調に作製が進んでおり,次年度に計画していた解析を実施できる見込みである。
作製したイネ形質転換体を用いて、TAGG2遺伝子発現量を改変したものでは遺伝子発現量を測定した上で、植物ホルモン内生量を定量する。GFPやGUSなどのレポーター遺伝子を導入したものでは、これらを利用して細胞内局在性や組織局在性を解析する。シロイヌナズナにおけるTAGG2ホモログについてもcDNAを調製し、組換えタンパク質の機能解析を進める。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 備考 (1件)
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http://www.agr.hokudai.ac.jp/biochem/