研究課題/領域番号 |
15K07379
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松井 博和 北海道大学, 農学研究院, 名誉教授 (90109504)
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研究分担者 |
佐分利 亘 北海道大学, 農学研究院, 助教 (00598089)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | サリチル酸 / ツベロン酸 / β-グルコシダーゼ / イネ / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
植物の生長,生殖,外部環境への応答など様々な生理作用は低分子有機化合物により制御されるが,このような生理活性物質には配糖化,脱配糖化されることで生理活性が制御されるものが存在する。本研究では,ジャスモン酸の水酸化物であるツベロン酸 (TA) の配糖体TA β-グルコシド (TAG) に作用するβ-グルコシダーゼ (TAGG) のうち,サリチル酸の配糖体サリチル酸β-グルコシドへの高い活性も併せ持つTAGGアイソザイム2 (TAGG2) について,細胞内局在性及び組織局在性をGFPおよびGUSをレポーター遺伝子として解析した。昨年度の研究により作出したGFPとTAGG2遺伝子を融合させた合成遺伝子を導入した形質転換イネのT1世代の植物体を用い,発芽直後の主根の細胞を共焦点レーザー顕微鏡により観察したところ,細胞の縁にGFPによる蛍光が観察された.この蛍光は原形質分離により細胞膜と細胞壁を剥離しても細胞壁上のみに見られたことからTAGG2は細胞壁に局在すると考えられた.GUS遺伝子をTAGG2遺伝子のプロモーター下流に連結した合成遺伝子を導入した形質転換イネのT3世代を用いてGUS染色を行なった.その結果,GUS活性は根,発芽した種子,および葉鞘で観察された.葉鞘については,維管束周辺組織が顕著に染色された. シロイヌナズナにおけるTAGG2アイソザイムのオルソログであるAtBGlu12,AtBGlu13,AtBGlu15,AtBGlu16およびAtBGlu17の大腸菌組換え酵素の発現系を構築した.AtBGlu12およびAtBGlu17は不溶性タンパク質となり,これら以外の酵素は可溶性タンパク質として生産された.AtBGlu17についてはシャペロニン存在下での発現により可溶性タンパク質としての組換えタンパク質の生産が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度作出した形質転換イネについて,経代を進めて予定通り解析に至り,TAGG2の細胞,組織局在性を明らかにすることができた.シロイヌナズナにおけるTAGG2のオルソログについても,組換えタンパク質の生産条件がほぼ決定され,生化学的機能を解析することが可能と考えらえる.
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今後の研究の推進方策 |
TAGG2遺伝子を過剰発現させた形質転換イネとRNAiによりTAGG2遺伝子の発現をノックダウンさせた形質転換イネの解析を行う.サリチル酸内生量を測定するとともにいもち菌摂取試験を行い病害抵抗性を検討する.シロイヌナズナのTAGG2オルソログについては基質特異性を中心に検討し,サリチル酸β-グルコシドへの活性が高いものについてはT-DNA挿入欠失株を入手してサリチル酸およびこの配糖体の内生量を測定する.
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