ジャスモン酸の水酸化物ツベロン酸の配糖体ツベロン酸グルコシドの加水分解活性を持つイネ由来β-グルコシダーゼTAGG2はサリチル酸 (SA) の配糖体サリチル酸β-グルコシド (SAG) に対しても高い加水分解活性を示す.本年度はTAGG2遺伝子の過剰発現イネとRNAiによりTAGG2遺伝子の発現を抑制したイネを用い,各種ホルモン量をUPLC-MS/MSを用いて定量した.SAとSAG量を定量したところ,地上部では各系統間でSAとSAG内生量に大きなSAは認められなかったが,地下部においてTAGG2過剰発現体の1系統においてSA内生量の増加とSAG内生量の低下(SA/SAGの増加) が確認された.遺伝子発現抑制株では,SA/SAGに大きな変化は認められなかった.なお,TA/TAGについても検討した結果,過剰発現体では野生型酵素よりTA/TAGが優位に高かった.いもち菌による病害抵抗性試験においては,TAGG2発現抑制体では野生株と抵抗性に大きな変化はなかったが,過剰発現株において抵抗性の低下が観察された.シロイヌナズナのTAGG2ホモログであるAtBGlu13,AtBGlu15およびAtBGlu16について活性タンパク質を大腸菌で生産し,機能を解析した.これらの酵素はいずれもSAG加水分解活性を示したものの,SAGよりAtBGlu13とAtBGlu15はβ1-3結合からなるグルコオリゴ糖のラミナリオリゴ糖に対して,AtBGlu16はβ1-4結合からなるグルコオリゴ糖のセロオリゴ糖に対して高い加水分解活性を示した.これらの機能からこれらのホモろぐのSAG代謝への寄与は小さいと考えられた.
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