研究実績の概要 |
SaCel6BのHS-AFM解析について、平成29年度では以前に撮りためたデータの解析をおこなった。一分子解析の結果、糖質加水分解酵素ファミリー6(GH6)に属する活性ドメインを有する細菌由来のSaCel6BやCfCel6Bは、GH7活性ドメインを有するカビ由来のTrCel7Aと比較して、セルロース表面上を素早く移動し、また表面上から離脱しやすいということが明らかとなった。次に細菌由来のGH6セルラーゼとカビ由来のGH7セルラーゼを同一実験系内に混合し、この混合物をHS-AFM観察すると、GH6セルラーゼとGH7セルラーゼ分子はセルロース表面上をそれぞれ逆方向に動くことが観察された。混合物中のそれぞれのセルラーゼの一分子解析をおこなうと、単独時と比較して、GH6, GH7ともどもセルロース表面上から脱離しにくくなるということが明らかとなった。 SaCel6B野生型酵素の結晶化条件の検討について、平成29年度では次の様に研究を進めた。SaCel6Bを精製するためにイオン交換クロマトグラフィーをおこなうと、得られる精製酵素がダブルピークを形成することが明らかになった。このため二つのピークをそれぞれ分画し、別々で結晶化条件の検討をおこなった。しかしながら検討した結晶化条件では、結晶の生成は確認することができなかった。このほかGH6活性ドメインだけの部分欠損変異酵素を作製し、その結晶化を試みる事とした。GH6活性ドメインのみのX線結晶構造では、SaCel6Bとアミノ酸相同性の高いセルラーゼ8種についての解析結果があるので、これらを参考に部分欠損変異酵素を構築した。しかしながら基質吸着ドメインを欠損させた変異酵素では、酵素が発現しなかった。
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