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2016 年度 実施状況報告書

液胞アミノ酸リサイクルシステムの調節機構解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K07396
研究機関愛媛大学

研究代表者

関藤 孝之  愛媛大学, 農学研究科, 教授 (20419857)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード液胞 / トランスポーター / オートファジー / アミノ酸
研究実績の概要

出芽酵母液胞アミノ酸トランスポーターAvt4は液胞内の中性・塩基性アミノ酸をサイトゾルへと排出し、窒素飢餓条件でのオートファジーアミノ酸リサイクルにおいて中心的な役割を果たす。本年度はシロイヌナズナホモログの液胞膜局在とアミノ酸輸送活性を明らかにし、植物では初めて液胞からアミノ酸を排出するトランスポーターとして報告した。また、分裂酵母ホモログのN末端親水性領域を欠損した変異型ホモログの解析よりこの領域が液胞からアミノ酸排出に必須ではないが、胞子形成に何らかの機能を有することを報告した。
Avt4は飢餓条件ではサイトゾルへ効率的にアミノ酸を供給するために活性化すると考えられる。我々は Avt4が窒素飢餓条件で速やかに脱リン酸化されることを見出し、予想リン酸化部位のアラニン置換により栄養豊富条件でもほぼ脱リン酸化された変異型Avt4の発現株を構築した。しかしこの発現株の液胞内アミノ酸含量の減少は部分的であったことから、Avt4の活性化に脱リン酸化と重複して機能する別の機構の存在が示唆された。また、プロテインホスファターゼをコードするSIT4の破壊株ではAvt4の窒素飢餓条件での脱リン酸化が遅延し、液胞内アミノ酸含量の減少が部分的に抑制されることを見出した。この株ではさらに細胞内Avt4レベルも低下したことから、Sit4がAVT4の発現にも関与することが示唆された。この点について我々は染色体より発現したGFP融合Avt4の細胞内レベルが窒素飢餓条件で大幅に増加することを見出し、転写因子Gln3とGat1が重複して機能することによって転写段階で調節されることを明らかにした。Sit4はGln3とGat1を活性化することから、転写と翻訳後の両段階でAvt4の活性調節に機能することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

我々は14-3-3タンパク質(Bmh1/Bmh2)がAvt4 N末端親水性領域と相互作用することを見出し、そのAvt4活性への関与について検討している。14-3-3タンパク質の欠損は致死的であるため、条件特異的な欠損株を単離し、液胞内アミノ酸含量を測定したが、現段階でAvt4を介したアミノ酸輸送活性への関与を示唆する結果は得られていない。またAvt4のリン酸化がアミノ酸輸送活性に及ぼす影響についてもリン酸化部位に変異を導入し解析したが、液胞内アミノ酸含量の変化は部分的であった。これまではプラスミドからGFP融合Avt4を発現させ、その翻訳後段階での活性調節機構に焦点を絞って研究を進めてきた。AVT4破壊株においてプラスミドから発現したAvt4の細胞内レベルは栄養豊富条件においても窒素飢餓条件とほぼ同等に高レベルだが、液胞内アミノ酸含量は野生株同様の栄養応答を示すため、Avt4発現量の重要性はこれまで未検討であった。しかし、染色体からの発現により栄養条件に応答したAvt4細胞内レベルの変化を見出し、発現調節も考慮した解析が必要となった。これまでプラスミドより発現させていた変異型Avt4を染色体から発現する菌株の単離がほぼ完了しており、液胞内アミノ酸含量、および液胞膜小胞アミノ酸輸送活性への影響評価に向けた基盤が整ったところである。発現調節を含めた今後の解析により、より正確な活性調節機構の理解が可能になると考えられる。また、無細胞タンパク質合成系を使ったAvt4のリポソームへの再構成実験ではAvt4の合成を確認するとともに、プロトン駆動力を供給する大腸菌F-ATPaseについてもATPase活性とプロトン輸送活性を保持したまま精製できており、概ね順調に進捗している。

今後の研究の推進方策

本年度単離した各種変異型Avt4を染色体から発現する株を用いて以下の解析を進める。1)単離液胞膜小胞を用いて、Avt4 N末端親水性領域の保存配列除去およびリン酸化部位のアラニン置換によるアミノ酸輸送活性への影響評価を行う。2)昨年度行ったリン酸化部位のアラニン置換体の解析では栄養豊富条件での液胞内アミノ酸含量の変化は部分的であった。この結果は定常状態ではAvt4の活性変化が他のトランスポーターによって相補された可能性を示唆する。そこで飢餓条件から栄養豊富条件に移し、経時的に液胞内アミノ酸含量の回復を調べ、より顕著な活性への影響の検出を目指す。3)昨年度の解析で14-3-3タンパク質欠損株において栄養豊富条件での液胞内アミノ酸含量の変化を検出したが、Avt4の活性変化によるものではないことが示された。今後、窒素飢餓条件での14-3-3タンパク質とAvt4の相互作用と、液胞内アミノ酸含量およびAvt4のリン酸化状態への14-3-3タンパク質欠損の影響を検討する。Avt4のリポソームへの組み込みとその活性評価においては本年度調製したAvt4を組み込んだリポソームと精製F-ATPaseを用いて以下の解析を進める。4)両者を再構成し、ATP依存的なアミノ酸輸送活性を検出する。5)Avt4のN末端親水性領域を欠損すると液胞からのアミノ酸排出が増加する。この欠損変異型Avt4をF-ATPaseと共にリポソームへと再構成し、アミノ酸輸送活性への影響を評価する。これらの解析により前述1)で活性に変化が見られた変異型Avt4についてリポソームへと再構成し、速度論的解析を行う技術基盤を確立する。

次年度使用額が生じた理由

物品の購入に充てるには残金が少額であるため、次年度の物品購入に加えることにより効率的な購入に使用したい。

次年度使用額の使用計画

プライマー(3,000~4,000円程度)の購入費用を補填する。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Functional identification of AtAVT3, a family of vacuolar amino acid transporters, in Arabidopsis.2017

    • 著者名/発表者名
      Yuki Fujiki, Hiromitsu Teshima, Shinji Kashiwao, Miyuki Kawano-Kawada, Yoshinori Ohsumi, Yoshimi Kakinuma, Takayuki Sekito
    • 雑誌名

      FEBS Letters

      巻: 591 ページ: 5-15

    • DOI

      10.1002/1873-3468.12507.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] The amino-terminal hydrophilic region of the vacuolar transporter Avt3p is dispensable for the vacuolar amino acid compartmentalization of Schizosaccharomyces pombe.2016

    • 著者名/発表者名
      Miyuki Kawano-Kawada, Soracom Chardwiriyapreecha, Kunio Manabe, Takayuki Sekito, Koichi Akiyama, Kaoru Takegawa, Yoshimi Kakinuma
    • 雑誌名

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      巻: 80 ページ: 2291-2297

    • DOI

      10.1080/09168451.2016.1220819

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Ypq3p-dependent histidine uptake by the vacuolar membrane vesicles of Saccharomyces cerevisiae.2016

    • 著者名/発表者名
      Kunio Manabe, Miyuki Kawano-Kawada, Koichi Ikeda, Takayuki Sekito, Yoshimi Kakinuma
    • 雑誌名

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      巻: 80 ページ: 1125-1130

    • DOI

      10.1080/09168451.2016.1141041

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 液胞/リソソーム膜を介したアミノ酸輸送の分子機構2016

    • 著者名/発表者名
      関藤孝之, 柿沼喜己
    • 雑誌名

      化学と生物

      巻: 5 ページ: 324-334

    • DOI

      10.1271/kagakutoseibutsu.54.324

    • 謝辞記載あり
  • [学会発表] 出芽酵母液胞アミノ酸トランスポーターAvt4の合成と合成後における調節について2017

    • 著者名/発表者名
      村上瑛夢, 杉本航, 兵頭美波, 児玉理美, 佐藤有美香, 石本晶也, 河田美幸, 関藤孝之
    • 学会等名
      日本農芸化学会2017年度大会
    • 発表場所
      京都女子大学(京都府京都市)
    • 年月日
      2017-03-18
  • [学会発表] 液胞アミノ酸トランスポーターAvt4の活性調節について2016

    • 著者名/発表者名
      兵頭美波,児玉理美,石本晶也,佐藤有美香,村上瑛夢,河田美幸,関藤孝之
    • 学会等名
      第34回YEAST WORKSHOP
    • 発表場所
      島根大学松江キャンパス(島根県松江市)
    • 年月日
      2016-11-05
  • [学会発表] 液胞ヒスチジントランスポーターYpq3のアミノ酸に応答した細胞内レベルの変化について2016

    • 著者名/発表者名
      山縣里奈,池田紘一,真鍋邦男,武村聡一郎,杉本航,河田美幸,関藤孝之
    • 学会等名
      第34回YEAST WORKSHOP
    • 発表場所
      島根大学松江キャンパス(島根県松江市)
    • 年月日
      2016-11-05
  • [学会発表] PQループタンパク質Ypq1、Ypq2、Ypq3の機能解析2016

    • 著者名/発表者名
      池田紘一,真鍋邦男,山縣里奈,河田美幸,関藤孝之
    • 学会等名
      第34回YEAST WORKSHOP
    • 発表場所
      島根大学松江キャンパス(島根県松江市)
    • 年月日
      2016-11-05
  • [学会発表] 出芽酵母のリジンによる生育阻害の分子機構2016

    • 著者名/発表者名
      山口翔悟,村尾奈美,河田美幸,関藤孝之
    • 学会等名
      第34回YEAST WORKSHOP
    • 発表場所
      島根大学松江キャンパス(島根県松江市)
    • 年月日
      2016-11-05
  • [学会発表] 出芽酵母液胞膜タンパク質Ypq2とYpq3の機能解析2016

    • 著者名/発表者名
      池田紘一,真鍋邦男,山縣里奈,河田美幸,柿沼喜己,関藤孝之
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2016-11-05
  • [学会発表] 液胞ヒスチジントランスポーターYpq3のヒスチジン応答性細胞内レベル変化の分子機構2016

    • 著者名/発表者名
      山縣里奈,池田紘一,真鍋邦男,武村聡一郎,杉本航,河田美幸,関藤孝之
    • 学会等名
      第7回愛媛微生物学ネットワークフォーラム
    • 発表場所
      松山大学樋又キャンパス(愛媛県松山市)
    • 年月日
      2016-10-29
  • [学会発表] 出芽酵母液胞アミノ酸トランスポーターAvt4の窒素飢餓条件での細胞内レベル増加について2016

    • 著者名/発表者名
      兵頭美波,児玉理美,石本晶也,佐藤有美香,村上瑛夢,河田美幸,関藤孝之
    • 学会等名
      第7回愛媛微生物学ネットワークフォーラム
    • 発表場所
      松山大学樋又キャンパス(愛媛県松山市)
    • 年月日
      2016-10-29
  • [学会発表] 液胞膜局在性アミノ酸輸送体の多様性と多重性について2016

    • 著者名/発表者名
      関藤孝之
    • 学会等名
      第7回愛媛微生物学ネットワークフォーラム
    • 発表場所
      松山大学樋又キャンパス(愛媛県松山市)
    • 年月日
      2016-10-29
    • 招待講演
  • [学会発表] Involvement of vacuolar amino acid recycling in sporulation of Saccharomyces cerevisiae2016

    • 著者名/発表者名
      Takayuki Sekito, Niniko Yamashita, Atsushi Yamanaka, Naoko Sugimoto, Miyuki Kawano-Kawada, Yoshimi Kakinuma
    • 学会等名
      14th International Congress on Yeasts
    • 発表場所
      Awaji Yumebutai International Conference Center(兵庫県淡路市)
    • 年月日
      2016-09-11 – 2016-09-15
    • 国際学会
  • [学会発表] The role of Ypq proteins in the transport of basic amino acids in vacuoles of Saccharomyces cerevisiae2016

    • 著者名/発表者名
      Miyuki Kawano-Kawada, Kunio Manabe, Takayuki Sekito, Koichi Ikeda, Yoshimi Kakinuma
    • 学会等名
      14th International Congress on Yeasts
    • 発表場所
      Awaji Yumebutai International Conference Center(兵庫県淡路市)
    • 年月日
      2016-09-11 – 2016-09-15
    • 国際学会
  • [学会発表] 窒素飢餓条件における出芽酵母液胞アミノ酸トランスポーターAvt6の機能解析2016

    • 著者名/発表者名
      山下にに子,山中敦詞,杉本直子,宮西遥香,河田美幸,関藤孝之,柿沼喜己
    • 学会等名
      第57回日本生化学会中国・四国支部例会
    • 発表場所
      高知大学医学部(高知県南国市)
    • 年月日
      2016-05-28

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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