最終年度は、シロイヌナズナおよびイネの MRS2 タンパク質について、以下の解析を行った。 1 シロイヌナズナ Mg2+ 膜輸送ファミリータンパク質 AtMRS2 間のキメラタンパク質の作成 相同性は非常に高いもののAl 感受性が大きく異なる AtMRS2-10とAtMRS2-1に着目した。AtMRS2-10とAtMRS2-1に唯一存在する細胞外領域は、アミノ酸 2 残基のみが異なる。細胞外領域を互いに交換した細胞外領域をもつキメラタンパク質を作製し、それぞれのキメラタンパク質のMg2+輸送能とAl3+の阻害効果を、精製したタンパク質を組み込んだリポソームおよび大腸菌 Mg2+膜輸送多重変異株を用いて解析した。その結果、AtMRS2-1とAtMRS2-10のMg2+輸送に対するAl3+の効果の違いに寄与するのは細胞外領域ではない事が示された。 2 イネ OsMRS2 タンパク質の機能解析 イネはシロイヌナズナに比べて、Al 耐性である。精製したOsMRS2-1を組み込んだリポソームを用いてMg2+の輸送とAlによる阻害効果を解析した。その結果、OsMRS2-1はAlを輸送せず、Al耐性のMg2+輸送タンパク質であることが示された。 補助事業期間全体を通じて、シロイヌナズナ 3種 およびイネ 2種類の MRS2 タンパク質のMg2+の輸送とAlによる阻害効果、およびAl 輸送を解析した。その結果、MRS2 タンパク質は、植物におけるMg2+輸送タンパク質であるが、そのAl 感受性は、MRS2 タンパク質によって大きく異なることを明らかにした。今後、MRS2 タンパク質分子内のAl感受性部位を特定することにより、世界規模で問題となっている Al による植物の生育阻害に対する分子育種に貢献できる可能性を示した。
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