βフェニルアラニンの光学分割に役立つβフェニルアラニンアミノアシラーゼ(βPheAA)の構造機能相関を明らかにする目的で、H29年度は、Burkholderia属細菌由来R体特異的βPheAA(R-βPheAA)のリガンドをソーキングした結晶の構造解析と部位特異的変異体の生化学解析、ならびにVariovorax属細菌由来R-βPheAAの結晶構造解析に取り組んだ。また、Burkholderia属細菌由来S体特異的βPheAA(S-βPheAA)についても生化学解析および結晶化を行った。 <1.Burkholderia属細菌由来R-βPheAAの結晶構造解析および生化学解析> C末端His-tag融合型R-βPheAA(R-βPheAA-His)の結晶にリガンドをソーキングした結晶の構造解析に重点的に取り組んだ。高分解能ではないもののリガンドの電子密度が認められ、基質認識部位をほぼ特定できたと考えている。基質認識部位と考えられる領域の部位特異的変異体5種を設計し、精製試料を用いて生化学解析を行った。部位特異的変異体5種類のうち2種は野生型酵素と同等の活性を示した一方で、残り3種は活性がほぼ失われていた。 <2.Variovorax属細菌由来のR-βPheAAの結晶構造解析> R-βPheAA-Hisについて、これまでよりも高分解能な2.5Å分解能で回折像を収集できた。多数の回折データを解析した結果、現在得られている結晶はTwinであることが分かった。Burkholderia属細菌由来R-βPheAA-Hisの結晶構造をモデルとするMR法による構造解析を試みているが、まだ成功していない。 <3.Burkholderia属細菌由来S-βPheAAの生化学解析および結晶化>組換え発現/精製系の構築を進め、精製試料を用いて生化学解析を行った結果、本酵素は金属が共存した条件で反応を行った方が活性が高くなることが分かった。組換え発現の培地に亜鉛を添加することで精製試料量が増加し、高活性型組換え酵素が得られるようになった。結晶化条件をスクリーニングした結果、サイズが小さい結晶が得られる条件を見出した。
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