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2016 年度 実施状況報告書

昆虫におけるオーキシン生合成酵素の分子進化とゴール形成能獲得の因果性の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K07405
研究機関茨城大学

研究代表者

鈴木 義人  茨城大学, 農学部, 教授 (90222067)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードオーキシン / ゴール / 昆虫 / 生合成 / 阻害剤 / カイコ
研究実績の概要

本研究ではカイコをモデル系とした絹糸腺酵素液を用い,昆虫におけるオーキシン(活性本体はインドール酢酸,IAA)生合成系を解明し,生合成酵素の特定と,それに基づくゴール形成昆虫への分子進化の過程の解明や,生合成阻害剤の有効活用を目指している。
既に昆虫におけるIAA生合成経路はトリプトファン(Trp)→インドールアセトアルドキシム(IAOx)→インドールアセトアルデヒド(IAAld)→IAAであることを示していたが,IAOxやIAAldが内生物質としても,あるいは上記経路の前駆体からの代謝物としても検出できないという問題点があった。それに対し,各前駆体からIAAを生成する見かけの酵素活性を測定することにより,各中間体の生成速度より代謝速度の方が早いと評価され,上記の説明を得るに至った。また,IAAld→IAAの変換の阻害剤IBI1の共存下で,TrpやIAOxを大量投与た場合にもIAAldが検出されなかったことから,IAAldからIAAに至らない別経路が存在すると推定し,IAAldの代謝物の同定を行った結果,インドールエタノール(IEtOH)が同定された。IAOxを投与した際,IBI1共存下で減少するIAAの生成量が,丁度IEtOHの増加分と一致し,IAAld→IAAの変換が,IBI1によってIAAld→IEtOHへ切り替わったことが判明した。また,この研究を通して,IAOxがIAA生合成における真のIAAld前駆体であることが証明された。
一方,昨年度はIBI1が加水分解されて生じる分解物の1つを同定し,今年度はその対になる分解物を同定した。両者の活性を比較することによって,片方にIBI1とほぼ同等の阻害活性が検出され,阻害活性に必要な構造を単純化することが出来た。
また,絹糸腺粗酵素で唯一生成物が確認できるIAAld→IAAの変換に関して,それを触媒する酵素を生化学的に精製,単離し,N末端配列の決定に成功した。当該活性を有していることが妥当と思われる配列情報が得られている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

IAA生合成過程に関しては,Trp, IAOx, IAAldからIAAへの変換効率の差から,生合成経路を推定し,また,IBI1がいずれの前駆体からのIAA生成をも阻害することに基づき,推定生合成経路が正しいことの傍証としていた。しかし,本推定経路を確実にすることが今後の研究を不安なく遂行する上で極めて重要であると考え,上記,各段階の酵素活性の評価と,中間体から分岐する代謝経路を確定することにより,中間体が検出できないという問題点に対する原因を特定し,不安要素を排除することが出来ると共に,仮説としていたIAA生合成の律速段階を明らかにすることが出来。本成果はもともと想定していなかった成果である。また,阻害剤の分解物を同定し,それにも強い活性があることを示したことは,今後,阻害剤を使用した基礎,および応用の両研究を進める上で重要な知見であり,本成果も想定外のものである。さらに,IAAld→IAAを触媒する酵素も特定できており,ゴール形成昆虫が高効率なオーキシン生産能の獲得に至った分子進化を明らかにする上で重要な前進である。

今後の研究の推進方策

IAAld→IAAを触媒する酵素については,反応速度論に関わるKcat, Vmax等の測定を行うと共に,IBI1の標的酵素であることから,阻害様式を特定する。また,基質特異性についても明らかにする。
Trp→IAOxおよびIAOx→IAAldを触媒する酵素についても,カイコ絹糸腺から生化学的に生成を進める。粗酵素ではそれぞれの生成物は検出できないが,精製を進め,生成物を代謝する酵素から分離することにより,生成物の検出を可能とする。すなわち,例えばIAOxを投与した時,生成するIAAldは,IAAあるいはIEtOHへ変換すると考えられるので,IAAld, IEtOH, IAAの全てを測定し,IAAldが検出されず,IAAあるいはIEtOHが検出される画分をさらに精製する,という手順を取る。
一方,ゴール形成昆虫であるハバチから,相同な機能のタンパク質遺伝子のクローニングを行う。ゲノム等の情報が得られた昆虫類から,相同遺伝子のアライメントを行い,縮重プライマーによるPCR増幅を試みる。そのアプローチが機能しない場合は,ハバチから抽出したRNAを用い,RNA seq解析により,発現している遺伝子の配列情報を網羅的に入手し,それに基づくクローニングと活性評価を行う。

次年度使用額が生じた理由

次年度の経費が少なく,特に次世代シーケンサーを用いた配列解析などの可能性も考え,なるべく予算を残すように計画的に支出した結果である。

次年度使用額の使用計画

主に酵素の精製,同定を行うため,カラム剤やHPLC等の購入が主となる。また,状況に応じて,委託によるRNA seq解析にも使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 昆虫におけるインドール酢酸の生合成に関する研究2017

    • 著者名/発表者名
      横山千晃,永田晋治,上妻由章,鈴木義人
    • 学会等名
      日本農芸化学会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2017-03-20

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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