高齢化社会を迎えた我が国では、神経疾患が重要な社会問題となっている。近年、シアル酸を含むスフィンゴ糖脂質が神経突起伸展など、神経の分化制御に重要な役割を担っていることが明らかにされた。従来、脊椎動物のガングリオシドの生物機能が精力的に進められてきたが、近年、棘皮動物にも多くのガングリオシドが存在し、それらが培養大脳皮質細胞の生存維持作用、神経突起伸展作用を有することが明らかにされた。本研究では、これら棘皮動物由来ガングリオシドを化学的に再構築することにより、これらの活性物質的基盤を与えるとともに、広範な類縁体の合成と評価により、活性発現に必須な構造の抽出、それに基づいたより活性の強い物質の開発を進めることによって、棘皮動物由来ガングリオシドの医学・薬学的応用を図ることを目的として研究を進めてきた。 これまでの研究で、コブヒトデ由来ガングリオシドであるPNG-2A、マナマコ由来ガングリオシドであるSJG-2の合成を達成しており、本年度は、、ニッポンウミシダ由来CJP-シリーズの全合成を達成した。本分子は、天然物を用いた実験により、NGF非存在下でも神経突起伸展作用を有することが知られており、構造的にもセラミドにリン酸を介してイノシトールが結合したイノシトールホスホセラミド構造を基本としており、合成化学的に興味深い。 また、これまでに合成を他阿制した分子の神経突起進展作用を測定し、当該活性発現に必要な構造要素を明らかにした。
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