研究課題/領域番号 |
15K07411
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村井 正俊 京都大学, 農学研究科, 助教 (80543925)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ユビキノン / VDAC / 光親和性標識 / ミトコンドリア / クリックケミストリー |
研究実績の概要 |
ユビキノンに代表されるキノン類は、呼吸鎖電子伝達系における電子伝達担体としてはたらき、バクテリアから高等生物に至るまで幅広く分布する生理活性分子である。一方、最近の研究では、電子伝達には直接関与しないものの、ユビキノンを“補因子”として持つことで機能する「ユビキノン結合性タンパク質」の存在が幾つか示唆されている。ミトコンドリア外膜に存在する電位依存性アニオンチャンネル(VDAC)は、そうしたユビキノン結合性タンパク質の候補の一つであり、いわゆる膜透過性亢進と呼ばれるシトクロムcの細胞質への漏出など、アポトーシスの鍵現象に深く関与することが知られているが、両者の相互作用を明確に実証した例はこれまでにない。本研究では、出芽酵母ミトコンドリアを実験材料として、独自に合成したユビキノンプローブを用いた光親和性標識実験を切り口に、VDACとユビキノンの関係を明らかにすることを目的とした。
ユビキノンのキノン環とイソプレン側鎖末端に、アジド基とアルキンをそれぞれ導入したユビキノンプローブを合成し、 PUQ-1がVDAC1に特異的に結合していることを明らかにした。さらに、プロテアーゼ限定分解によって、PUQ-1の結合部位はVDAC1のC末端付近のPhe221-Lys234に存在することを明らかにした。ユビキノンとVDACの相互作用の生理的な意義を考察する目的で、出芽酵母ミトコンドリアの膜透過性亢進におけるユビキノンの影響について精査した。その結果、PUQ-1はCa+で誘導される膜透過性亢進を低濃度で抑制した。これらの実験結果は、ユビキノンとVDAC1の相互作用を初めて直接的に実証したものであり、ユビキノンがVDACに特異的に結合することで膜透過性亢進が制御されることを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ユビキノンのVDACにおける結合部位が、そのC末端付近のPhe221-Lys234に存在することを明らかにした。また、出芽酵母ミトコンドリアの膜透過性亢進におけるユビキノンの影響について精査した結果、PUQ-1はCa+で誘導される膜透過性亢進を低濃度で抑制することを明らかにした。これらの一連の実験結果は、ユビキノンとVDAC1の相互作用を初めて直接的に実証したものであり、ユビキノンがVDACに特異的に結合することで膜透過性亢進が制御されることを示唆するものである。
以上の理由から、研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ユビキノンとVDACの相互作用についてはほぼ完全に証明することが出来た。最終年度は、膜透過性亢進とVDACとの関係について、ユビキノンの役割を軸にさらに詳細に解析を進めたいと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、生化学実験を重点的に実施したため、有機合成用の試薬として計上した予算の使用率が低かった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、ユビキノンプローブの構造展開を進める予定であり、昨年度の余剰金額をこの目的で使用する予定である。
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