• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

合成化学を基盤とした機能性分子リガンドの開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K07421
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

高橋 俊哉  国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (00202151)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードプロリルオリゴペプチダーゼ / リガンド分子 / ジベンゾフラン骨格 / p-テルフェニル / ディ-ルズ・アルダー反応
研究実績の概要

プロリルオリゴペプチダーゼ(POP)阻害活性を持つポリオゼリンの構造式を確定する目的で、昨年度合成することに成功したポリオゼリンならびにその位置異性体の詳細なNMRスペクトル解析を行った。その結果、報告されていた構造式に相当するp-置換体の1H-NMRスペクトルは、天然物とはおおよそ一致するものの、13C-NMRスペクトルのデータはまったく一致しなかった。一方、o-置換体の各種スペクトルは報告されている天然ポリオゼリンのそれらと良い一致を示した。これらの結果から、報告されていたポリオゼリンの提出構造式はあやまりであり、o-置換体に訂正すべきことを明らかにした。現在、生化学者と共同で各種異性体のPOP阻害活性試験を検討中である。また、ジメチルジベンゾフラン骨格を持つp-テルフェニル誘導体をビオチニル化することで3種の機能性リガンド分子へ誘導し、TNF-α産生阻害ならびに酵素阻害活性を調べた。その結果、バイリニン類と比べると弱いものの、p-テルフェニルコア部分にTNF-α産生阻害活性が見られた。一方、USP5に対する阻害作用は、ビオチニル体も含めて観測できなかった。このことより、リガンド分子をデザインするためにはオリジナルの天然物と同様の立体的な傘高さのみならず酸素官能基の存在も重要であるとの有用な知見を獲得することができた。
食用にもされる植物起源の抗腫瘍性天然物フィサングリジンAの機能性分子リガンド化を図るため、5環性コア部と2環性側鎖を別々に調製しリガンド分子への誘導を行おうと計画した。まず、天然ステロイドへの酸化による酸素官能基の導入と環開裂反応などを行い5環性コア部のリガンド分子創製に有用な4環性ケトンの合成に成功した。また、より効率的なリガンド分子合成を目指し、キラルな環状ケトンへのディ-ルズ・アルダー反応により双環性ケトンを合成することにも成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前年度にポリオゼリンならびにその位置異性体の合成に成功した。しかし、詳細なスペクトル解析やバイオアッセイのためのサンプル調製に、合成ルートの一部を改良する必要があることが判明した。この条件検討に予想以上の時間がかかったため、フィサングリジンA のリガンド分子化への取りかかりが遅れてしまっている。フィサングリジンAを構成している大きな2つのパーツのうち、5環性コア部に相当する化合物は、2つの異なるアプローチにより合成が検討され、天然ステロイドからのルートによりその骨格はほぼ出来上がっている。

今後の研究の推進方策

ポリオゼリンとその位置異性体はPOP阻害活性や抗腫瘍活性を検討する。ポリオゼリンそのものを機能性リガンド分子化することは官能基の不安定性から困難と考えられるので、化学的に安定な誘導体へと改変し、リガンド化を図る。
フィサングリジンAは双方のコア部の合成を完成後、機能性リガンド分子への誘導を進める。フィサングリジンAを構成している大きな2つのパーツのうち、5環性コア部に相当する化合物がほぼ出来上がっているので、さらに酸化段階を上げた後、ビオチニル化や蛍光色素標識などの機能性官能基を導入する。また、2環性側鎖部分の合成を行いつつ、新規な分岐糖型酵素阻害剤の合成を進める。

次年度使用額が生じた理由

ポリオゼリンの真の構造式を確定するために合成品の詳細なスペクトル分析と天然物との比較、ならびに合成ルートの一部改良に予想以上に時間が取られてしまった。そのため、本年度のプロジェクトであるフィサングリジンAのリガンド合成にとりかかるのが遅れ、合成試薬やガラス器具の購入が未だ十分ではなく、これらに充てるべき予算が次年度に繰越となった。

次年度使用額の使用計画

前年度の繰越分は、フィサングリジンAのリガンド分子合成のための試薬類とアッセイのための生化学試薬、クロマト用シリカゲルの購入費用に充てられる。また、本年度分予算は新規な分岐糖型酵素阻害剤の創製のための試薬類、ガラス器具、およびクロマト用シリカゲルの購入に有効に活用される予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Synthesis of 3-phenyldibenzo[b,d]furan-type bioprobes utilizing vialinin B as a structural motif2017

    • 著者名/発表者名
      Takahashi S., Suda Y., Nakamura T., Matsuoka K., Koshino H.
    • 雑誌名

      Syn. Comm.

      巻: 47 ページ: 22-28

    • DOI

      10.1080/00397911.2016.1245754

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Isolation of coralmycins A and B, potent anti-Gram negative compounds from the myxobacteria Corallococcus coralloides M232016

    • 著者名/発表者名
      Kim Y. J., Kim H-J., Kim G-W., Cho K., Takahashi S., Koshino H., Kim W-G.
    • 雑誌名

      J. Nat. Prod.

      巻: 79 ページ: 2223-2228

    • DOI

      10.1021/acs.jnatprod.6b00294

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Total Synthesis of the Proposed Structure for Aromin and its Structural Revision2016

    • 著者名/発表者名
      Takahashi S., Sato D., Hayashi M., Takahashi K., Yamaguchi Y., Nakamura T., Koshino H.
    • 雑誌名

      J. Org. Chem.

      巻: 81 ページ: 11222-11234

    • DOI

      10.1021/acs.joc.6b02187

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 強力なTNF-α産生制御活性を持つVialinin Bのターゲット探索のためのプローブ創製2016

    • 著者名/発表者名
      須田康明, 松岡浩司, 中村健道, 越野広雪, 髙橋俊哉
    • 学会等名
      GlycoTOKYO 2016 シンポジウム
    • 発表場所
      東工大 大岡山キャンパス(東京・目黒区)
    • 年月日
      2016-11-19
  • [学会発表] 強力なTNF-α産生制御活性を持つVialinin Bのターゲット探索のためのプローブ創製2016

    • 著者名/発表者名
      須田康明, 松岡浩司, 中村健道, 越野広雪, 髙橋俊哉
    • 学会等名
      日本化学会秋季事業 第6回CSJ化学フェスタ2016
    • 発表場所
      タワーホール船堀(東京・江戸川区)
    • 年月日
      2016-11-14

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi