研究課題
生理活性天然物を構造モチーフとしてデザインされた機能性分子リガンドは、生体機能解明のための重要なツールになりうる。本プロジェクトの初年度から中盤にかけては、ビスフラン系p-テルフェニル化合物をモデルにしたビオチニルリガンド類の創製とTNF-aの産生制御検証、プロリルオリゴペプチダーゼ阻害剤ポリオゼリンの提出構造式の訂正と酵素阻害-抗腫瘍作用研究、粘菌由来の一連のテルフェニル類の全合成で成果が得られた。さらに、抗腫瘍性天然物フィサングリジンAの機能性分子リガンド化を図るため、容易に入手可能な天然ステロイドからの効率的変換法の開発を検討し、リガンド分子創製に有用な4環性ケトンの合成に成功した。最終年度では、TMG-キトトリオマイシンをモデルとした新規な分岐糖型酵素阻害剤の創製を行った。糖鎖加水分解酵素阻害剤としては、ピラノース環内酸素原子を炭素、窒素、硫黄などで置き換えた擬似糖がよく知られている。一方、TMG-キトトリオマイシンは、擬似糖を含まないにもかかわらずN-アセチルグルコサミニダーゼの阻害剤として機能する。この理由は、2位の嵩高いトリメチルアミノ基の立体障害により、ピラノース環が通常の椅子型からハーフボートに近い形に歪んでいるためである。これをヒントに、グルコースの2位をsp2炭素に置き換え、歪んだピラノース環を持つ分岐型糖がデザインされた。D-グルコースから2位水酸基のみフリーの糖を合成し、ウロースへ酸化の後、いくつかのWittig試薬を使って炭素鎖延長を検討したが、メチレンWittig試薬のみ目的物を与えることがわかった。さらに、脱保護を段階的に行い、2-デオキシ分岐糖の合成を達成した。現在、糖鎖の延長ならびに酵素阻害活性試験を検討中であるが、NMRを使った詳細なコンホメーション解析により、酵素阻害剤の構造情報に関してさらなる知見が得られるものと期待される。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters
巻: 28 ページ: 930-933
10.1016/j.bmcl.2018.01.054
Journal of Natural Products
巻: 81 ページ: 1070-1074
10.1021/acs.jnatprod.7b00922
The Journal of Organic Chemistry
巻: 82 ページ: 3159-3166
10.1021/acs.joc.7b00147