研究課題/領域番号 |
15K07422
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
都築 毅 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00404848)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 血管新生 / 共役脂肪酸 / がん / 血管内皮細胞 / HUVEC / マウス |
研究実績の概要 |
癌の発生と進展には、血管系がさまざまな形で密接に関係している。癌が増殖するときには、宿主から癌組織に向かう血管の新生が重要なステップになる。現在、癌治療の目的で血管新生を抑制する成分が注目されている。我々は共役脂肪酸の血管新生抑制効果を検討し、共役脂肪酸が強い血管新生抑制効果を有することを世界で初めて明らかにした。そこで、このような独創的な成果を基礎にして、天然由来の共役脂肪酸を腫瘍血管新生を予防する成分として臨床に応用するのに十分な情報をそろえること、また、共役脂肪酸を中心に血管新生抑制活性をもつ様々な食品成分に着目し、活性やメカニズムを比較し、有効な組み合わせを見出し、血管新生をコントロールする食事を提示することを目標に、「血管新生病を克服する食品開発に関する研究」と題して研究内容を深化発展させる。そのため、本研究では以下の研究課題を行った。 ●様々な天然由来共役脂肪酸の血管新生阻害活性やそのメカニズムを細胞培養試験で比較、検討し、より有効な物を見出した。●共役脂肪酸をはじめとして、血管新生抑制作用をもつ様々な食品成分に着目し、血管新生阻害活性やそのメカニズムを比較した。 今後、いかの研究課題を推進していく。 ●有効な共役脂肪酸を、マウス背部皮下法や移植癌動物実験で血管新生抑制効果を明確にする。●共役脂肪酸の吸収や代謝を動物実験で明確にし、血管新生阻害物質としての臨床試験へ応用するのに十分な情報を揃える。●より高い血管新生抑制効果を得ることができる食品成分の組み合わせを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、強い血管新生抑制作用をもつ共役脂肪酸の検索とその実用性を細胞培養試験や動物実験で明確にするために、以下のようなに研究課題を行った。 1、様々な天然由来共役脂肪酸の血管新生阻害活性やそのメカニズムの解明と応用 これまでの研究で、癌細胞を移植したヌードマウスに共役脂肪酸を経口投与すると、癌組織の著明な退縮作用をもたらすことを見出し、この癌組織退縮の機構として共役脂肪酸による血管新生阻害作用を明らかにしている。そこで本研究は、天然由来の様々な共役脂肪酸による血管新生抑制活性やそのメカニズムを培養細胞実験系で比較した。方法は、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)を用い、これをコラーゲンゲル間サンドイッチ法で三次元培養して管腔形成を評価した。これに、共役脂肪酸を作用させ、管腔形成の増減から血管新生阻害作用を調べた。管腔形成阻害作用を確認できたので、管腔形成時に観察される血管内皮細胞の増殖、遊走に共役脂肪酸がどのような影響を与えるのか調べた。これらを確認した後、DNAマイクロアレイと定量RT-PCR法により血管新生の阻害メカニズムを評価した。また、タンパク発現量も抗体アレイとウエスタンブロット法にて測定した。これらの方法を用いて、共役脂肪酸の活性やメカニズムの比較を同一の試験系で行い、活性の高いものの検索を行った。 2、血管新生抑制作用をもつ様々な食品成分の血管新生阻害活性やそのメカニズムの比較検討 共役脂肪酸の血管新生抑制効果をより増強するために、他の食品成分の組み合わせを検討する前段階として、共役脂肪酸をはじめとして、血管新生抑制作用をもつ様々な食品成分の血管新生阻害活性やそのメカニズムを同一の試験系で比較をした。試験系は上記のように培養細胞実験系で行った。検討する食品成分として植物ポリフェノールや脂容性ビタミン類、カロテノイドなど様々な物を同一の試験系で評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、強い血管新生抑制作用をもつ共役脂肪酸の検索とその実用性を細胞培養試験や動物実験で明確にするために、昨年度に続き、以下の研究課題を行う。 ●共役脂肪酸(活性が高かった異性体)の作用を生体モデル(in vivo)で評価する。方法としては、初めにマウス背部に誘導された腫瘍血管新生に対する効果を調べる(マウス背部皮下法)。マウス背部の皮下で形成される血管網を評価することで、血管新生への活性成分の影響を評価する。 ●癌細胞を移植したヌードマウスの腫瘍成長に与える影響や付随して起こる血管新生への影響を調べる。ヌードマウスで良い結果が得られたら、正常マウス(ICR)を用いた移殖癌動物試験を行い、より一般性を高める。 ●共役脂肪酸の吸収代謝や安全性を長期の動物試験(正常マウスやラットを使用)を行うことで明確にし、血管新生阻害物質としての臨床試験へ応用するのに十分な情報を揃える。 ●前年度の結果を基に、より高い血管新生抑制効果を得ることができる食品成分の組み合わせを検討する。初めに、細胞培養試験で評価し、有望な組み合わせを動物試験でも明らかにする。さらに、ヒトへ応用しやすいように、有望な活性成分が多く含まれる食素材を食餌に混ぜて動物試験を行い、より食品に近い状態での効果の確認を行う。そして、有望な食素材を選定していき、最終的には血管新生をコントロールする食事を提示する。
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