合成グルココルチコイドであるデキサメタゾンは、インスリン抵抗性を惹起して筋萎縮を誘導することから、筋萎縮モデル動物の作成に用いられている。デキサメタゾンに対する感受性は年齢によって異なり、高齢ラットは若齢ラットと比べてデキサメタゾンによって筋萎縮が誘導されやすいことが知られている。しかし、高齢ラットは、準備に手間や時間がかかり個体差も大きいことなどから、出来るだけ若いラットの方が実験に利用しやすい。そこで、若い成熟ラットのデキサメタゾンに対する感受性を検証した。その結果、9週齢のWistar系雄性ラットでも腹腔内にデキサメタゾンを毎日1回5日間投与することで、筋萎縮が誘導された。このモデルラットを用いて、ロイシンの筋肉タイプ特異的な萎縮抑制効果を検証した。6時間の時間制限給餌に馴致したラットに、給餌開始直前に蒸留水に懸濁したロイシン(135mg/100g体重)を強制的に経口投与して14日間飼育した。実験開始9日目から5日間、腹腔内にデキサメタゾンを投与して筋萎縮を誘導し、最終投与日の翌日に屠殺して、遅筋(ヒラメ筋)、速筋(長趾伸筋)、混合筋(腓腹筋)の重量を測定したが、ロイシン投与群と非投与群(対照群)の骨格筋重量に有意な差は見られなかった。次にロイシンの筋萎縮抑制効果が観察されなかった原因を探るために、ロイシンセンサーと考えられているSestrin2のmRNA発現量の週齢による変化を、骨格筋ごとに調べた。その結果、Sestrin2のmRNA発現量は、いずれの骨格筋においても週齢の増加に従って増加する傾向が見られた。これらのことから、ロイシンに対する感受性は週齢によって変化する可能性があり、筋萎縮抑制効果も週齢によって異なる可能性が示唆された。
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