研究課題/領域番号 |
15K07424
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
矢ヶ崎 一三 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 特任教授 (20166474)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 2型糖尿病 / 血糖値 / 培養筋細胞 / AMPK / グルコース輸送体4 / 高尿酸血症 / 脂質異常症 |
研究実績の概要 |
今年度は、果菜特に野生型二倍体イチゴに含まれる成分(TXFと呼ぶ)が、栽培型の八倍体イチゴにも含まれることを確認した。本物質を培養筋細胞に作用させると、インスリン非存在時でも細胞内へのグルコース取り込み能を促進することが見いだされた。このグルコース取り込み促進作用は、AMPK(グルコース輸送体4の細胞膜への移行を促進することに関わるキナーゼと呼ばれる酵素)の阻害剤の存在によって、一部消去されることが認められたので、TXFによるグルコース輸送体4の細胞膜移行促進が示唆された。これらのことから、動物個体レベルでもTXFが抗糖尿病作用を発揮する可能性が考えられた。 そこで、TXFを2型糖尿モデルKK-Ayマウスに投与した。正常マウスに比べてKK-Ayマウスにおいては、空腹時血糖、血漿インスリン濃度、インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IR値のほか、血漿中尿酸濃度が有意に上昇することを私たちは既に見いだしているが、TXFを経口投与することによりこれらの上昇がすべて有意に抑制されことが認められた。以上のことは、1)KK-Ayマウスが2型糖尿病モデルであるばかりでなく、慢性高尿酸血症モデルでもあること、2)TXFが抗糖尿病的にばかりではなく抗高尿酸血症的にも作用すること、3)TXFが尿酸による糖尿病の増悪化を防ぐ可能性を示唆した。このモデルにおいて脂質異常症とくに高トリグリセリド血症も認められるが、TXF投与によりこれが抑制される傾向が認められた。 なお、糖尿病時に血漿アディポネクチン濃度は低下したが、TXFはこの低下に対しとくに影響を与えなかったことから、TXFの抗糖尿病作用はアディポネクチンを介さないで発揮されるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初から抗糖尿病作用を示す果菜ファイトケミカルを研究期間中に3種類見出すことを目標とした。培養細胞系(in vitro)にてグルコース取り込みを促進する果菜ファイトケミカルをスクリーニングし、次いで2型糖尿病モデルKK-Ayマウスにて個体レベル(in vivo)で有効性を確認することとした。現在までに2種類を見いだし、うち1種類については論文として発表された。2種類目についても実験的検討をほぼ終了しつつあり、論文化に向けて準備中であるので、おおむね予定通りに進捗していると判断される。これらの研究過程で、2型糖尿病モデルKK-Ayマウスは持続的高尿酸血症モデルでもあることを見いだした点は予想外の発見である。この内容についても、論文として投稿準備中である。3番目の供試候補ファイトケミカルについても入手済であり、最終年度に検討を行う。 以上から「おおむね順調に進展している」と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、すでに見通しのたっている3種類目の果菜由来成分Uについて検討する予定である。成分Uについては、食事誘導性高尿酸血症血症も軽減化することを見いだしているので、2型糖尿病モデルKK-Ayマウスにおける慢性高尿酸血症およびインスリン抵抗性に対する改善作用が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿料を無料で済ませることができたこと(図をカラーにする必要がなかったこと、別刷と掲載号を購入しなかったことによる。ただし、著者用PDFは無料で得られている)、検体の合成委託料が若干節約できたこと、本年度は謝金と旅費が生じなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度で第3番目の果菜成分Uの作用を研究する。その際に動物実験で高額なキット類が複数必要となるので、その費用等として使用する。また、実験補助用の謝金の費用または旅費として用いる。
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