インスタント食品や加工食品の多用は、現代人の食生活の特徴の一つと言える。これらの食品には様々な添加物が使用されているが、その健康影響については意見が分かれている。そこで発色剤や酸化防止剤として加工肉に多用されている亜硝酸ナトリウムの影響について検討した。 Balb/cマウスに亜硝酸ナトリウム添加食(含有量 0.09% ; 日本での最大使用許可量の約13倍)を与え、60日間飼育した。対照群には、亜硝酸ナトリウム非添加食を与えた。 実験食投与期間中の飼料摂取量、実験食投与後の体重および肝臓と腎臓の重量は対照群と実験群で有意差は生じなかったが、脾臓重量は対照群と比べて実験群で有意に増大した。 脾臓で、がん原遺伝子およびストレス応答遺伝子の発現量が対照群と比べて実験群で増加した。好中球発現遺伝子(Mpo、Ly6gなど)の発現量も実験群で増加した。一方、マクロファージ関連遺伝子や、ヘルパーT細胞マーカー、NK細胞マーカーおよび成熟樹状細胞マーカーの発現量は、実験群で減少した。さらに炎症関連遺伝子(Tnf、Il6、Ifng、Il10、Il18、Tgfb、Tlr2、Icam1、Vcam1など)の発現量が対照群と比べて実験群で低下した。亜硝酸ナトリウムによる肝臓での遺伝子発現量の変動は、脾臓と比べて少なかった。 脾臓で生じた炎症関連遺伝子の発現量の低下は、マクロファージやT細胞が減少したことによると考えられるが、その理由や個体の免疫系に与える影響については、現在検討中である。 インスタント食品や加工食品に過剰に含まれる食塩や油脂に加えて、食品添加物も組織の遺伝子発現の変動を介して生活習慣病の発症・悪化に関与している可能性がある。
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