研究実績の概要 |
昨年に構造決定できなかったウーロンテアニン合成時の副生成物の構造決定を目指した。構造決定には至らなかったが、水中で生成するが不安定でありNMR測定中に速やかに減衰することが明らかとなった。その生成物は濃茶褐色を呈しており、NMR等の結果から高分子化合物であると推測している。そのため、単離した化合物は高分子化の前駆体であると推測している。また昨年度と同様にEGCgの酸化反応によるウーロンテアニン以外の生成物の探索を行い、2種について単離した。そのうち1種についてはA環、C環及びガレート基は保持され、分子内に4つのエステル結合を持つ二量体であり誘導体化等から構造推定を行なった。 またコレステロール吸収抑制作用の分子メカニズムに関して本年度は、相互作用の位置特異性をより詳細に明らかにするために、タウロコール酸及びカテキン類の各種誘導体を調製し、NMRを用いて研究した。その結果、イオン的な相互作用を推定していたタウロコール酸のスルホ基については、除去した誘導体でも変化が無かったことから相互作用に関与しないことが明らかとなった。次に、カテキンの2位及び3位の立体化学の影響について、3種異性体を合成して解析を行った。その結果、立体の違いによりケミカルシフトの変化率に差が生じ、その差はそれぞれの立体化学ではなく2位―3位の配座に依存し、トランス配座の方がシス配座より相互作用が弱い可能性が示唆された。 さらに、これまでNMRによる相互作用解析に1H-NMRを用いてきたが、13C-NMRを用いた検討を行なった。13C-NMRは、感度は低いものの炭素骨格の直接情報が得られる利点がある。1H-NMRの場合と同様に、C環3位の変化率が最も大きく、ついでガレート1位,4位、カルボニル炭素の順であった。一方、同じフェノール性水酸基を持つA環及びB環部に関しては、あまり変化が見られなかった。
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