研究課題/領域番号 |
15K07431
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
長岡 伸一 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (30164403)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 食品機能 |
研究実績の概要 |
本研究は、様々な抗酸化物質や食品が活性酸素の一つであるフリーラジカルを消滅される能力を評価する実用的で汎用的な方法(Aroxyl Radical Absorption Capacity (ARAC法))、同様に一重項酸素を消滅させる能力を評価する方法(Singlet Oxygen Absorption Capacity (SOAC法))、およびフリーラジカルにより酸化されたビタミンEを再生する能力を評価する方法(Alfa-Tocopherol REcycling Capacity (ATREC法))の開発と高度化を行い、新たな食品の抗酸化活性の分析方法として確立することを目的とする。 1.ARAC法の高度化:PQQ類の抗酸化能力や生体系に近く抗酸化剤を含まない牛胎児血清にビタミンEを加えて、均一溶媒やミセルと比べてフリーラジカル消滅能力がどのように変化するかを検討した。また、トマト、パプリカ、紫ニンジンなど野菜抽出物のARAC値を評価を実行中であり、実際に野菜の抗酸化能力の評価に用いることができることが分かった。 2.SOAC法の高度化:金属イオンのような抗酸化剤以外の食品成分が一重項酸素消滅能力に与える影響をレーザーを用いた評価方法の結果と比較して論文や学会発表を行った。また、一部のフラボン類、女性ホルモン、アロエ含有類似分子、米糠などの食品のSOAC値を求めて、論文発表を行うとともに総説を執筆した。 3.ATREC法の開発:ダブルミキシングストップトフロー法を用いて抗酸化剤や食品のビタミンE再生能力ATREC値を評価する方法を開発した。ATREC値が小さい場合は、正確な値を求めるためにシミュレーションを行う必要があることが分かった。また、緑茶に含まれるカテキン類のビタミンE再生反応では量子論的トンネル効果が重要な役割を果たすことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.ARAC法の高度化及び全般的進捗 申請書では、ARAC法、SOAC法、ATREC法を統合して農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業に応募して大規模試験につなげることは平成28年度以降に計画していたが、トマト、パプリカ、紫ニンジンなど野菜抽出物のARAC値を評価を実行して実際に野菜の抗酸化能力の評価に用いることができることが分かるなど、当初の計画以上に研究が進展したため、平成27年度内に平成28年度の「発展融合ステージ」に申請をすることができた。 2.SOAC法の高度化 アロエ含有類似分子の一重項酸素消滅能力を評価して、大韓民国済州島で行われた27th international conference of photochemistry国際学会でspecial guaranteed oral speakerとして招待された。さらに、共同研究者とともに行ったアロエ含有類似分子のような分子内水素結合を含む分子の一重項酸素消去に関わる励起状態分子内プロトン移動の理論的研究が日本コンピュータ化学会秋季年会2015精選論文特集に選ばれた。こうしたことから、当初の計画以上に研究が進展していると考えられる。 3.ATREC法の開発 様々な天然抗酸化剤のATREC値を求めることは平成28年度以降に計画していたが、シミュレーションを用いて緑茶に含まれるカテキン類のビタミンE再生反応で量子論的トンネル効果を見いだして論文として投稿しているので、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1.ARAC法の高度化及び全般について 現在行っている野菜抽出物のARAC値評価を拡大して、SOAC値やATREC値とともにデータベースにまとめる。申請した平成28年度農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「発展融合ステージ」は不採択であったが、評価方法の改良、データの追加等を行ってARAC法、SOAC法、ATREC法を統合して、何らかの形で再度の申請につなげたい。 2.SOAC法の高度化 フラボン類、女性ホルモン、アロエ含有類似分子に加えてパーキンソン病の治療に重要な役割を果たすと言われるドーパミン類のSOAC値を求めて、抗酸化との関係を検討する。また、牛胎児血清など生体系に近い系での実験を行い、均一溶媒やミセルと比べて一重項酸素消滅能力がどのように変化するか、フィチル基(細胞膜中で安定に存在させる機能があるビタミンE分子の尾)が与える影響などを検討する。 3.ATREC法の開発 緑茶に含まれるカテキン類のみならず様々な抗酸化剤のATREC値を求めるとともに、生体系に近い系での実験も行う。
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備考 |
ARAC値、SOAC値のデータベース
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