研究課題/領域番号 |
15K07432
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
菅原 卓也 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (00263963)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リゾチーム / 抗炎症効果 / 炎症性サイトカイン / 腹腔マクロファージ / インターロイキン(IL)-6 / 腫瘍壊死因子(TNF)-α / 一酸化窒素 |
研究実績の概要 |
リゾチームは、粘膜や唾液に含まれ、細菌の細胞壁を構成する多糖類を分解することで、抗原非特異的な自然免疫系の第1の生体防御因子として、感染症予防に関与している。これまでの研究で、リゾチームは過剰炎症状態のマクロファージ細胞株RAW264.7細胞に対して、炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)-6や腫瘍壊死因子(TNF)- α産生を抑制することで、抗炎症作用を示すことが明らかになった。 そこで、平成28年度は、マウス腹腔より回収した初代マクロファージ(P-Mac)に対する効果を検討した。その結果、細胞株に対する効果と同様に、LPSで過剰炎症状態を誘導したP-Macに対しても、IL-6およびTNF-α産生を抑制し、抗炎症効果を示した。また、活性酸素種である一酸化窒素産生も抑制した。一方、貪食活性には影響しないことが明らかになった。作用メカニズムを解析した結果、リゾチームは、炎症性サイトカインの遺伝子発現を抑制することが明らかになった。そこで、転写活性を制御しているMAPキナーゼ経路に及ぼす影響を検討した結果、リゾチームは、MAPキナーゼファミリーであるJNKのリン酸化を抑制することが明らかになった。また、NF-κBの核内移行も抑制することで、転写因子の活性化を抑制し、炎症性サイトカインの産生を下方制御していることが明らかになった。 以前の研究で、リゾチームはリンパ球の抗体産生を促進し、その活性はを加熱処理することで上昇することが明らかになっている。そこで、抗炎症効果についても同様の現象が認められるかを検討した。リゾチームを100℃、20分間か熱処理した後に抗炎症効果を検討したところ、加熱処理しない場合と比較して、活性の低下が認められ、抗体産生促進効果とは相関しない結果となった。 さらに、リゾチームは、マクロファージの細胞内に取り込まれていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初代マウス腹腔マクロファージ(P-Mac)に対する抗炎症効果の検討、作用メカニズムの検討、一酸化窒素産生や貪食活性に与える影響など、当初予定していた試験項目について、全て明らかになったことから、概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本課題最終年度の平成29年度は、炎症モデルマウスを用いた生体内におけるリゾチームの抗炎症効果について検討する。LPS(リポポリサッカライド)で全身性炎症を誘導したマウスに対してリゾチームを経口投与し、血中の炎症性サイトカイン濃度や腹腔マクロファージの炎症性サイトカイン産生、および貪食活性等を検討する。また、高脂肪食摂餌による食事性肥満で誘導される脂肪組織における炎症応答に対するリゾチームの摂取効果を明らかにする。脂肪組織における単球遊走因子(MCP-1)の発現や炎症性サイトカイン産生に与える効果、脂肪組織へのマクロファージの浸潤に及ぼす影響を中心に明らかにする。
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