これまでの研究で、リゾチームには抗炎症効果があり、LPSで過剰炎症状態にしたマクロファージ細胞株RAW264.7細胞やマウス腹腔マクロファージの炎症性サイトカイン産生を、遺伝子発現レベルで抑制することが明らかになっている。そこで平成29年度は、生体内におけるリゾチームの抗炎症効果について検討した。6週齢メスBALB/cマウスに6日間リゾチームを経口投与した後に、LPS(5.0 mg/kg体重)を腹腔内投与することで全身性炎症症候群を誘導した。Intact群(炎症非誘導)、Control群(炎症誘導)、リゾチーム投与群(炎症誘導およびリゾチーム経口投与;Low群4.5 mg/kg体重/日、Middle群 450 mg/kg体重/日、High群 2250 mg/kg体重/日)の5群で検討を行った。各群において、リゾチーム投与による体重変化の有意な変化は認められなかった。炎症誘導後2時間後の血中IL-6およびTNF-α量を測定した結果、Control群と比べてHigh群においてIL-6およびTNF-α量が有意に抑制された。また、有意差はなかったものの、Middle群においても抑制傾向がみられた。また、脾臓における各サイトカインの遺伝子発現レベルを検討したところ、High群においてIL-6の遺伝子発現が有意に抑制されていた。また、Middle群においても抑制的な傾向が認められた。さらに、IL-1βおよびIL-12の遺伝子発現がHigh群において有意に抑制された。IL-1βは単球をはじめとした樹状細胞や好中球など様々な細胞から産生され、IL-12はマクロファージや好中球、樹状細胞から主に産生される。これらの結果からリゾチームは生体内においてマクロファージや他の細胞にも作用して遺伝子発現を抑制し、抗炎症効果を示す可能性が示唆された。また、脂肪細胞のMCP-1発現を抑制した。
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