研究課題/領域番号 |
15K07434
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
西山 和夫 宮崎大学, 農学部, 准教授 (40164610)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ニトロオレイン酸 / 抗がん作用 / 親電子性物質 |
研究実績の概要 |
近年、ニトロ化脂肪酸が抗炎症作用を示すことが報告されており、その作用にはタンパク質SH基との反応性、つまり親電子性が関与していることが示唆されている。イソチオシアネートなどの親電子性物質には抗がん作用を示すものがあるが、ニトロ化脂肪酸の抗がん作用に関する研究はほとんど行われていない。そこで本研究では、9-ニトロオレイン酸(9-NO2-OA)の抗がん作用に関して細胞増殖抑制作用、細胞周期への影響を指標として検討し、その効果を明らかにすることを目的とした。細胞はヒト膀胱がん細胞T24、ラット繊維芽細胞3Y1、3Y1細胞をがん遺伝子rasで形質転換したHR-3Y1-2細胞を用いた。細胞増殖抑制試験では9-NO2-OA(1~50μM)で細胞を処理後、トリパンブルー色素排除法にて細胞数をカウントした。また、N-acetylcysteine (NAC、1 mM)が9-NO2-OAの作用に及ぼす影響を同様に調べた。さらにフローサイトメトリーにて細胞周期を解析した。T24細胞の細胞増殖抑制試験において、9-NO2-OAは代表的なイソチオシアネートであるsulforaphaneとほぼ同等の細胞増殖抑制作用を示した。また、9-NO2-OAは3Y1細胞と比較してHR-3Y1-2細胞により強い細胞増殖抑制作用を示す傾向が認められた。さらに、NAC処理により9-NO2-OAの作用は有意に抑制された。9-NO2-OAは細胞周期に大きな変化をもたらさなかったが、sub-G1期の細胞が濃度依存的に増加する傾向が認められた。以上の結果より9-NO2-OAは、がん細胞選択的な細胞増殖抑制作用を示す傾向が認められ、高濃度ではsub-G1細胞が多く見られたことから、アポトーシスによるがん細胞致死作用があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
9-ニトロオレイン酸のがん細胞選択的増殖抑制作用を示す傾向が示されたが、統計的に有意な差が得られていない。細胞増殖抑制と細胞死誘導のメカニズムを明らかにするために細胞周期解析を行ったが、得られた結果は十分とは言えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
9-ニトロオレイン酸のがん細胞選択的増殖抑制作用と細胞増殖抑制と細胞死誘導のメカニズム解明の研究を継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
9-ニトロオレイン酸のがん細胞選択的増殖抑制作用に関する実験と細胞増殖抑制と細胞死誘導のメカニズム解明に関する実験が十分に実施できなかったため、今年度、これらの実験を継続して実施する。
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