研究課題
高齢動物骨格筋における酢酸の作用に焦点を絞り、酢酸が筋線維組成およびミトコンドリア生合成においてどのように作用するか、また酢酸が骨格筋委縮を予防できるかについて検討を行うと共に、骨格筋における酢酸の作用機序を明らかにすることを目的とした。32週齢のSD系雄性ラットを使用し、5週間の予備飼育後、37週齢から56週齢まで週5日間、1%酢酸投与群(Ace群)、水投与群(Water群)をそれぞれ0.5ml/100g(体重)を胃ゾンデにより 胃腔内に投与した。飼育期間中に体重、摂餌量の測定、また小動物代謝計測システムによる代謝測定を行った。55週齢Water群では投与前の36週齢と比較して酸素消費量が有意に低下していたのに対しAce群では投与前と変化がなく、加齢に伴うエネルギー消費量の低下が抑制されていた。56週齢のWater群と比較してAce群においてヒラメ筋の筋線維数が有意に増加しており、特に遅筋線維数の増加がみられたことから、酢酸により遅筋線維数の減少が抑制されると示唆された。遅筋化に関わる遺伝子であるmef2aのヒラメ筋における遺伝子発現レベルを調べたところ加齢により発現が減少しており、56週齢のWater群とAce群を比較したところmef2a発現レベルが有意にAce群で上昇していた。これらの結果から酢酸が遅筋線維現象の抑制に影響を与えていると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、高齢動物骨格筋における酢酸の作用に焦点を絞り、酢酸が筋線維組成およびミトコンドリア生合成においてどのように作用するか、また骨格筋委縮を予防できるかについて検討を行うと共に、骨格筋における酢酸の作用機序を明らかにすることを目的としており、以下の項目(1)高齢動物における酢酸摂取による代謝動態の解析、(2)酢酸摂取が高齢動物の運動耐久力に及ぼす影響、(3)酢酸摂取による高齢動物骨格筋の筋線維組成に及ぼす影響、(4)骨格筋ミトコンドリア生合成およびミトコンドリア機能に関する検討、(5)筋委縮関連遺伝子の発現動態の解析、および(6)培養細胞を用いた酢酸の作用機序の解明、について計画している。平成27年度には、このうち(1)~(3)について検討を行ったことから、研究課題についておおむね順調に進展していると考える。
本年度は、(1)骨格筋ミトコンドリア生合成およびミトコンドリア機能に関する検討、(2)筋委縮関連遺伝子の発現動態の解析 について検討を進める。この遂行ために、培養細胞及び実験動物を用いて遺伝子レベルおよびタンパク質レベルでの解析を進める。ミトコンドリアおよび骨格筋萎縮に関わる因子の動態を解析するために各種抗体、mRNA解析のための各種プローブおよび関連試薬等を購入して進める。
試薬のコストダウン等のために残額が生じた。
試薬等の購入を行う予定である。
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Critical Reviews in Food Science and Nutrition
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岡山県立大学保健福祉学部紀要
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