研究課題
高齢動物における酢酸摂取が骨格筋萎縮に対してどのような作用を示すか検討する目的で、筋委縮関連遺伝子の解析および組織化学的な解析を行った。加齢によりIGF-1が減少すると、それらの活性が低下し、FoxOの脱リン酸化、次いでAtrogin-1などの筋委縮関連遺伝子の活性化が引き起こされると考えられる。そこで酢酸投与した動物の骨格筋抽出液を用いてリン酸化FoxO、Akt、およびmTORをウェスタンブロット法により解析した。またAtrogin-1およびMuRF1などの発現レベルをRT-PCR法により解析した。その結果、筋萎縮と老化に関連する遺伝子であるfbxo32 (Atrogin-1)、trim63 (MuRF1)およびtgfb1 (TGF-β)の遺伝子発現レベルはAce群で低下していた。加齢に伴い筋線維横断面積が拡大することの原因の一つとして、脂肪蓄積が考えられ、筋線維内における脂肪滴の蓄積は、肥満や2型糖尿病、老化骨格筋等において認められる。オイルレッド染色とHE染色を行い骨格筋の脂肪滴蓄積および筋線維化について解析した。ヒラメ筋では、Water群で筋線維内に多数の脂肪滴および筋線維化および壊死がみられた。腓腹筋はAce群と比較しWater群で筋線維内に少数の脂肪滴がみられたが、顕著な筋線維化は認められなかった。以上の結果から、中高齢のラットに継続的に酢酸を摂取させることにより、加齢に伴う脂肪蓄積や筋繊維化などが抑制されることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、高齢動物骨格筋における酢酸の作用に焦点を絞り、酢酸が筋線維組成およびミトコンドリア生合成においてどのように作用するか、また骨格筋萎縮を予防できるかについて検討を行うと共に、骨格筋における酢酸の作用機序を明らかに擦ることを目的としており、以下の項目(1)高齢動物における酢酸摂取による代謝動態の解析、(2)酢酸摂取が高齢動物の運動耐久力に及ぼす影響、(3)酢酸摂取による高齢動物骨格筋の筋線維組成に及ぼす影響、(4)筋委縮関連遺伝子の発現動態の解析、(5)骨格筋ミトコンドリア生合成およびミトコンドリア機能に関する検討および(6)培養細胞を用いた酢酸の作用機序の解明、について計画している。平成27年度にはこのうち(1)~(3)、また平成28年度には(4)について検討を行ったことから、研究課題についておおむね順調に進展していると考える。
本年度は、(1)骨格筋ミトコンドリア生合成およびミトコンドリア機能に関する検討および(6)培養細胞を用いた酢酸の作用機序の解明、について検討を進める。この遂行のために、実験動物および培養細胞を用いて遺伝子レベルおよびタンパク質レベルで解析を進める。そのために必要な各種mRNA解析のためのプローブ、ミトコンドリア関連タンパク質の抗体等の試薬を購入して進める。
試薬等のコストダウンのため僅かな残額が生じた。
次年度の試薬購入に充てる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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